関西現代俳句協会

会員の著作(2013年事務局受贈分)

  句集

『青の記憶』

荒川美邦

文學の森 2013年2月4日発行



  奥入瀬のみどりが好きで羽化急ぐ        美邦

 奥州への旅が一番心に残っているがその時の旅の作品をまとめたものの題が「青の記憶」とのこといわば「青の記憶」は単なるひとつの旅の記憶ではなくなり句集『青の記憶』となったのは作者自身の人生の旅の記憶からである

豊田都峰・・・・・「序」より


 八十歳になったら自分の句集を是非欲しいと思い乍らその時がくると句整理に選句にと右往左往の毎日でした。
 これを過去の記憶として、又新しい傘寿の一扉を聞け残生の楽しさを探って行きたいと思って居ります。
 句集名の『青の記憶』とは、東北地方の、なかでも十和田湖から奥入瀬渓谷を歩いた時の心身の芯まで緑に染まって他の動植物に同化してしまった様な感覚が忘れられずに心の中にたたみこまれたものからつけました。

荒川美邦・・・・・「あとがき」より


○帯「自選十句」より

 密約のさくらへ時の流れ出す

 抱卵の鶴の夢みし運命線

 溺れねば見えぬ竜宮さくら貝

 伝言板なくした駅より枯始まる

 落椿ぴたりと決まりきなくさし

 奥入瀬のみどりが好きで羽化急ぐ

 霧みさき海に怨嗟の声沈む

 不在票月へとどける宵寝かな

 綿虫をつぶせし重さぬめり出す

 でで虫やあしたのための猿田彦


○発行所

 文學の森

 〒169-0075
 東京都新宿区高田馬場2-1-2
 田島ビル8階

 電話 03-5292-9188

 (定価 2,571円+税別)

◆句集『青の記憶』: 荒川美邦(あらかわ・みくに)◆

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