関西現代俳句協会

会員の著作(2012年事務局受贈分)

  句集

「神麓」

鈴鹿 仁

東京四季出版 2012年11月1日刊

 

  秋蟬の余分な刻は水となり

著者の住まいは、由緒ある社家として、神山の麓に位置する。
この静謐な環境の中で、俳系を重んじつつ、心ゆたかな俳句を目指す。
待望の処女作。                  

・・・・・「帯文」より

鈴鹿家の系統はやはり俳系に他ならない。
今回の題簽「神麓」としたのも社家鈴鹿家と密接な関係のある吉田神社との関りからと、もう一つは父・野風呂時代の「京鹿子」誌雑詠欄の名が「神麓集」であり、その懐古ゆえに胸の内に生きていたのかも知れない。
今回、仁句集の『神麓』と妻百合子句集の『猫贔屓』と同時期の上梓となったが、これも六十数年の連れ添った結果の神からの御褒美と思っている。

鈴鹿 仁・・・・・「あとがき」より

○帯「自選十五句」より

 誕生石輝く今宵起句薫る

 岩つばめダム放水を好きとする

 黒猫の視点の中の冬の葬

 陽を舐めて天の沙汰まつ冬の蠅

 でで虫の渦の向かうの山動く

 つくつくや修行のなかの坊と棒

 冬蝶に一念あるも愛は哀

 一升びんぽんと蓋あく水仙忌

 秋蟬の余分な刻は水となり

 きざはしに知足のひと日菩提の実

 蔭と影生むこの世とて半夏生

 橋渡る冬の真ん中一意めく

 来世とは善意に思ふつくつくし

 魚跳ねて雷雲湧きしこと伝ふ

 花洛忌のひと日は雲のあとを追ふ

○発行所

 東京四季出版

 〒189-0013
 東京都東村山市栄町2-22-28

 電話 042-399-2180

 (定価2800円、税別)

◆句集「神麓」(しんろく): 鈴鹿 仁(すずか めぐむ)◆