関西現代俳句協会

会員の著作(2012年事務局受贈分)

   句集

「火星一滴」

茨木 晶子

喜怒哀楽書房 2011年11月23日刊

 

  染匠に火星一滴秋深む  茨木 晶子

「渦」人にして頂いてから三十余年、様々の喜怒哀楽がありました。
遅鈍な私は運座でも句作でも締まらず、これという進歩もなく、過ぎ去った時間を幻とも無益とも思いがちで来ました。
でもこの間「渦」は私の大切な一本道でした。いま齢八十の坂半ば、今更何をと思いながらそこにしかない私の形を確かめてみたい・・・この自分史的発想に気がすこし軽くなり古いノートをとりだしたのです。
句集を編むときの常識にも耳を塞ぎ、ただわが分身をと拾い出した「日常」はやはり凡の羅列そのもの、「メモ」とするには相応しいものとなりました。ご傾膝にてお披きくだされば以て瞑すべしというところです。

茨木 晶子・・・・・「あとがき」より

○本編より十二句

 しなやかに少年撓む独楽の橋

 わが影に鰭生まれたり春疾風

 春雪や湯気の赤子の眩しさは

 青比叡故郷鯨のごとく在り

 戦中の型紙で裁つ花衣

 えんえんと溝蓋のあり大月夜

 一呼吸さうして一歩いちいの実

 ノラ今日は木に昇りをり秋の空

 菜の花が載りし聖書の革表紙

 祝箸直情の口恥ぢながら

 「雪五尺」そこに老いたる父母よ

 転んでも起きても寂しほとけのざ

○発行所

 発行者 茨木晶子

 制作・印刷 喜怒哀楽書房

 〒950-0801
 新潟市東区津島屋7-17

 電話 025-250-9666

 (非売品)

◆句集「火星一滴」(かせいいってき): 茨木 晶子(いばらき あきこ)◆