関西現代俳句協会

会員の著作(2011年事務局受贈分)

  句集

「月の巣」

矢野千代子

本阿弥書店 2011年4月23日刊

 

  料峭の石に雨ふる素読という

久々に小気味よい叙情の短韻律に出会えた感じがある。現代のさまざまを正面から書きとろうとして、俳句の伝承資産を活用しつつ制作している現代の俳句が、書くことが多いためにどうしても長くなり、説明的散文的になり勝ちないまの時、矢野のこの句の歯切れのよさ、省略の確かさには魅力がある。

金子 兜太・・・・・「帯」より

○帯「本書収録作品より」

  一月十七日 阪神淡路震災忌

 十七日授乳のような木洩れ日と

 蝦夷鹿は託(ことづか)りもの霧の巻く

 山滴るいっぱい蒐めた鳥の切手

 金雀枝の大きなうねりよく噛もう

 料峭の石に雨ふる素読という

 気泡かわるがわるに姉と雨蛙

 辣韮掘り夜の心音あかるいよ

 高速道に先頭がある麦の秋

 ぜいたくなかりがねの道月の巣へ

 風花が頬へ後方羊蹄山(しりべしやま)の使者

○発行所

 本阿弥書店

 〒101−0064
 東京都千代田区猿楽町2−1−8 三恵ビル

 電話 03−3294−7068

 (定価2500円、税別)

◆句集「月の巣」(つきのす):矢野 千代子(やの ちよこ)◆