関西現代俳句協会

【シンポジウム報告】

洛外沸騰/今、伝えたい俳句 残したい俳句

       第23回現代俳句協会青年部シンポジウム

曾根 毅

 第23回現代俳句協会青年部シンポジウムが、去る平成24年11月17日、京都市東山区の知恩院和順会館にて開催された。 今回の青年部シンポジウムは、「洛外沸騰」と銘打って、研究者・実作者を含めた4人の個性的なパネリストを配し、約3時間の討議を展開。関西(京都)で青年部シンポジウムが開催されるのは、実に十年ぶりのことである。

さて、今回のテーマは「今、伝えたい俳句、残したい俳句」というもの。冒頭に、総合司会の杉浦圭祐氏は、「伝えたい俳句とは、現代に生きる他者との共時的・水平的関係性の中で注目し同時代に伝えたい俳句」であり、「残したい俳句とは、後世の俳人との通時的・垂直的関係性の中で後世に残したい俳句」であるとその定義を説明した。当日配布の資料には、俳人は俳句にとっての他者に対して俳句の何を、どう伝えたいのか。俳句というジャンルを担ってゆく若者や後世に対して何を、どう残したいのか。俳句でしか伝えられないこと、残せないことはあるのかなどの問い掛けについて、真剣に向き合ってみたいとの意気込みが記されている。


 

 プログラムに沿って、愛媛大学教育学部准教授の青木亮人氏による基調講演から始まった。配布資料に記載された講演要旨の一部を紹介させていただく。

 どの句を選び、どの句を選ばないかは評者の俳句観が問われる営為であり、従ってここで求められるのは各パネリストに共通する価値観でなく、互いの主張が幾重にも絡まり、もつれ、途切れては結ばれるその一瞬を追うことで自らの俳句観が拡大していくこと、その体験を味わうことであろう。

 選択行為の前提と、この機会を通じての体験的な期待について述べられている。講演は映写資料を用いて、先ずは「ホトトギス」第四巻七号を掲出。この号の巻頭には「蕪村句集講義」が掲載されており、芭蕉に対して蕪村を称揚するという当時の「アンチ芭蕉」の価値観が見て取れること。次に大正年間の「ホトトギス」にて、高濱虚子が雑詠欄で飯田蛇笏を積極的に取り上げているのは、「アンチ碧梧桐」という価値観が当時の背景にあったという例を取り上げた。「ホトトギス」に限らず、結社の主宰、俳誌編集者などそれぞれが個別の事情を含む価値観を通じて「伝えたい俳句、残したい俳句」を選択し、発信して来たという内容を中心に進めたれた。



  続いてのパネルディスカッションは、司会に三木基史氏、パネラーには引き続きの青木亮人氏と、以下それぞれ実作者である岡田由季氏、松本てふこ氏、彌栄浩樹氏によって展開された。前半、四人のパネラーが俳句と関わるに至った経緯に始まり、所属結社の特徴や主宰との関係について、司会者が各々に質問する形となった。「結社」や「主宰」について取り上げた司会の三木氏の意図は、インターネットや自主出版などを通じて俳句の個別発信が容易になるにつれ、作品内容や発表手段が多様化し著しく変容している現在において、俳句を研磨し残してゆく役割が結社に存在するのか。そもそも師弟関係や結社の役割は何であるかという疑問に因っている。当日盛んに飛び交ったキーワードとして、「泥臭い師弟関係」というものがあった。彌栄氏は「師弟関係は泥臭さを伴うところはあると思う。作品を通じてのぶつかり合いはある」岡田氏は「先生の先生である加藤楸邨から受け継いでいるものもあるかもしれないが、個人的には意識していない」と語った。主宰に向かって投句を続けていくなかで、伝承的な技術や精神などを言葉によらず会得するということもあるだろう。また、コメンテーターの小池康夫氏は総括の中で、これまでに名句として残されてきたものというのは、句会で高得点を得るなど多数の評価を受けたかどうかには関係なく、発表の場と発言力を持った “影響力のある人物”がその発表の場をもって喧伝し残してきたものであるとコメントされた。



   シンポジウムの後半は、配布資料に沿って「次の人々に向けてあなたなら具体的にどんな句を伝えますか」という幾つかの質問に、パネラーが答える展開となった。質問項目は、「日本のことを知らない外国人に」「俳句を知らない小学六年生の子どもに」「芭蕉に」「子規に」「恋をしている人に」「ここ一番の勝負を迎えている人に」などである。これらの質問に対して、何故その句を選んだのかというところに、自ずと各人の俳句観が顕在化してくる。一つ紹介させていただく。

Q俳句に興味が無い若者世代に
※例えば大島優子(AKB)に

青木 ※AKBメンバーに向けての一句
    じゃんけんに負けて蛍に生まれたの           池田澄子

岡田 頭の中で白い夏野となつてゐる             高屋秋窓

松本 ふはふはのふくろふの子のふかれをり          小澤  實
    初夢のなかをどんなに走ったやら             飯島晴子

彌栄 ※相手に合わせて選びます。
    ひるがほに電流かよひゐはせぬか             三橋鷹女
    うたたねの泪大事に茄子の花                飯島晴子
    天体やゆうべ毛深きももすもも                折笠美秋

 他に、俳句は特定の読者を想定し、何かを伝える手段となり得るか。時事・震災俳句などについても触れられたが誌幅が尽きた。

(「現代俳句」2013年2月号より転載)


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