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5月21日
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5月1日
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5月1日
今月のエッセイに、小池康生さんの「選のチューニング」を掲載しました。

2018年5月のエッセイ

選のチューニング

小池康生

 現在は関西在住だが、東京に10年ほど住んでいたことがあり、それがどっぷり「銀化」の句会に嵌っていた時期でもある。「銀化」には月に8回ほど句会があり、すべてで中原道夫主宰の講評が聞ける。

 わたしは月に最低でも4、5回は銀化のどこかの句会に参加していて、多いときは、7回ほど出席していたこともあり、ある種のビョーキ、依存症になっていたのかもしれない。

 主宰の句集をたまたま図書館で読んで入門した者としては、主宰の講評を聞けることはなんともありがたく、道夫選の裏付けを知ることができるわけだし、作句の秘密にも近づけることになる。これを月に5回ほど聞くと、相当勉強になった。

 最初は、自分の句がどれだけ採られるのかが気になるのだが、次に、主宰と自分の選がどれだけ重なるかが気になってくる。最初は1句か2句しか重ならなかったものが、少しずつ増え、やがて7句選の内、5句重なることもたまにできてきて、内心、欣喜雀躍ということもあった。

 主宰の選に合うことが良いかというと、そこには色々な意見も生まれるが、当時のわたしは、一旦、主宰の選ぶような句を選びたいと思っていた。

 選句のときには、もちろん主宰のことは忘れている。自分の好みで選んでいるのだ。ただ、頻繁に講評を聞いているので、どこかで道夫の「できている句」が刷り込まれ、「見ている句」や「発見のある句」等がどういうものかを意識して印をつけていた。

 自分の好みで選をしているのだが、主宰から学んだセオリーの裏付けのようなものが影響してくる。自分の句が採られなくても、選が重なれば人知れぬ充実感を得られたものだ。

 そんな10年があり、関西に戻り、さらに10年――。体調を崩したこともあり、簡単に東京にいけなくなった。欠席投句は送っているが、あの空間のなかで、主宰のそばで選をして、主宰の選との違いや合致点を確認する作業はできない。

 主宰に近づく求心力のような選もあり、主宰から離れる遠心力のような選もあった。いずれにしろ、軸があり、そこを起点に近づいたり離れたりしているのだ。作品が主宰に似るのは、ただのコピペで、学ぶは真似るであれ、早く通過すべきことだが、選が似ることは俳人のある種の芯を作り、師系の幹のようなものになるのではないかと考えている。

 ある日、突然、初老という年齢になり、東京での俳句修行を思い出すと、あの10年がどれだけ貴重なものだったかが分かる。わたしは、いま、どれだけ主宰の選に重なるのだろう。どれだけ、主宰と異なる選ができているのだろうか。 東京がちと遠い。

(以上)

◆「選のチューニング」:小池康生(こいけ・やすお)◆

 

■今月のエッセイ・バックナンバー

◆2018年

タイトル 作 者
4月 高野素十のコントラスト視点 橋本小たか
3月 式年開帳 蔵田ひろし
2月 わたしの俳句観 平田 繭子
1月 炉話のこと 宇多喜代子

◆2017年

タイトル 作 者
12月 私が『鳥取の俳人 尾﨑坡酔』を出したわけ 小山 貴子
11月 俳句と私 桑田 和子
10月 句集のすすめ 外山 安龍
9月 松茸 西原 和孝
8月 大いなる未完の人 藤川 游子
7月 近頃、俳句に思うこと 米岡 隆文
6月 悪筆三銃士 藤本  晉
5月 「丹波百谷」俳句の今昔 大谷 茂樹
4月 おいしいアニミズム 三好つや子
3月 小海線のおにぎり 大城戸ハルミ
2月 はじめて通る道 谷川すみれ
1月 旅をする蝶 吉田 成子

◆2016年

タイトル 作 者
12月 命綱の結び方 花谷  清
11月 初学のこと 丸山 景子
10月 チョコを食べるのをやめてしまった 久留島 元
9月 灸花 志村 宣子
8月 野風呂岬を訪ねて 鈴鹿 呂仁
7月 弘前城の曳屋工事と甥の結婚式 綿貫 伸子
6月 技能・芸能の霊性と歴史性 熊川 暁子
5月 芭蕉終焉の地 森  一心
4月 近江富士 村井 隆行
3月 イチローと多作多捨 木村オサム
2月 田圃のことなど 久保 純夫
1月 手間暇ということ 宇多喜代子

◆2015年

タイトル 作 者
12月 堺大仙公園の日本庭園平成曲水の宴 谷下 一玄
11月 難病と闘いながら 政野すず子
10月 島の眺め 田宮 尚樹
9月 神戸北野坂界隈とジャズ 西川 吉弘
8月 豊かな時間 西谷 剛周
7月 戦後70年に思うこと
―飾らず、逞しく生きたい―
藤井冨美子
6月 住み心地のよい雑居ビル 辻本 冷湖
5月 生存証明 出口 善子
4月 集中治療室 小泉八重子
3月 それそれ神 辻本 孝子
2月 十年日記 森田 智子
1月 十二月のスーパーマーケットで 宇多喜代子

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年