関西現代俳句協会トップページ
2024年3月のエッセイ藍の晩年若森京子 去年の10月、一人の俳句仲間が69歳の若さで他界した。 桜散るこの世あの世の間のその世 柳生正名 自分にとって桜は「この世」そのままでなく 「あの世」でもなく、そのあわいに咲く花、そしてそれが散る「その世」こそ自分が俳句を描こうとしている世界そのものと感じると彼は言っている。 俳句を始めて55年目になるが、その内44年間を金子兜太先生の弟子であった幸せを思う。 長い闘病生活においても、実生活における苦悩、長い人生には色々あったが、その時少し世界を移行するテクニックを覚えた私は、ストレスの病にもかかる事なく歩んできた様な気がする。 産婦人科医であった主人は女性の精神的な病いの相談相手をしていたので、私の外での活動に協力的で理解があった事は大変有難かった。 誰もが通る老々介護に私も平成29年頃から入った。 入退院を繰り返す彼は自分の寿命を悟っていたのか全ての治療を拒否し、家で静かに最後は暮らしたいと在宅介護を強く希望したので私も覚悟を決めて、介護士、リハビリ師、家族に助けられて精一杯頑張ったつもりだ。 老々介護縄文土器を愛でる如 令和3年7月25日未明、88歳7ヶ月の生涯を、私一人が看取る中で閉じた。 主人の死後、病院にて私自身の肉体は限界にきていると診断を受けたのに不思議にも自覚症状が余りなく、海馬に螢がいっぴきいたかの様に正直、数日間の記憶がおぼつかないのだ。 死後のやさしさ濡縁にいて小春 最近のニュースを観れば戦争で多くの子供達の悲惨な姿に胸を痛めている。 8歳で敗戦を体験し、戦争中の悲愴な恐怖感、尾道市向島に疎開していた時の淋しさ、そして8月6日の広島の真赤な空の記憶は今でも鮮やかに甦る昨今だ。 地球上も、自然界も、人類も変化してゆく混沌とした現在、優しい後輩達に囲まれて、せめて俳句と言う言葉の小さな平和の温もりを感じながら余世を過ごしたいと願っている。 一人暮らし今日は山椒魚だった (以上) ◆「藍の晩年」:若森京子(わかもり・きょうこ)◆
■今月のエッセイ・バックナンバー ◆2024年
◆2023年
|
会員へのお知らせ■新着情報 >>こちらです ◇2024年4月27日(土) ◇2024年3月10日(日) ◇2023年12月2日(土) 開催されました!
◇2023年4月29日(土)
当サイトへのリンクについてご自由にリンクをお張りください。バナーが必要な場合は下記の画像をお使いください。88×31のGIF形式です。 申し出ていただければ、当サイトからもリンクさせていただきます。 |