関西現代俳句協会

■2021(令和3)年11月7日

かみがた通信句会選句発表

宇多喜代子 選

173 特選 飛鳥川へ一閃棚田の落し水 遊田久美子
143 次点 大滝や迸る水は空色 櫻淵 陽子
113 次点 流れ行く雲を映して仔鹿の目 山本あかね
17 入選 秋の雲日本武尊を追い掛けて 曾根  毅
34 入選 つつぬけの天を斜めに秋燕 村澤真紀子
47 入選 鯖雲の流れる方へ身体向く 秦   夫
53 入選 神無月五体をめぐる朝の水 赤窄  結
75 入選 リコーダー湖水たゆたふ秋の昼 井波 良江
97 入選 樹も石も神宿る国水澄めり  尾崎 竹詩
124 入選 千年が丸く修まり椿の実 西村 白杼
136 入選 秋夕日ぼこっと海に吸いこまれ 辻本 孝子
141 入選 軽さうに水車を回す春の川 橋 将夫
【特選句 選評】
 
やがて稲刈りをする田の水を落す。飛鳥川沿いの田、その水が光った。その一瞬をとらえた句。
 

久保 純夫 選

116 特選 赤ん坊に水の重さや月天心 麻殖生伸子
20 次点 紅萩に身を寄せ人とすれ違う 蔵田ひろし
52 次点 曼殊沙華昼の密度となりにけり 小西 瞬夏
28 入選 鬼やんま乾きし音を残しゆく 山ア  篤
66 入選 秋晴の螺旋階段拭きにけり 岡村 知昭
77 入選 ぎしゅぎしゅと水着絡まる次は数学 渡邉イツキ
122 入選 早々に鹿の来てゐる裁判所 樋本 和恵
124 入選 千年が丸く修まり椿の実 西村 白杼
161 入選 葛城の水の納まる青田かな 内田  茂
168 入選 耳朶はやさしきところ吊し柿 西谷 稔子
177 入選 一合の新米を研ぐ水の音 松本 善子
206 入選 糸電話糸をゆるめず居待月 村田あを衣
【特選句 選評】
 
赤ん坊の体重が5sと想定すると、水の重さは3sくらいだろうか。空の真中に浮かぶ月がこの赤子の未来を暗示している。果たしてどんな人生を送るのだろう。重さという表現が作者の禱りのように思われる。
 

曾根 毅 選

60 特選 どんぐりで払えるし見晴らしも良い 木村オサム
31 次点 姉はいまいわし雲で饒舌で 谷川すみれ
89 次点 灯しても灯しても出雲は白雨 米岡 隆文
20 入選 紅萩に身を寄せ人とすれ違う 蔵田ひろし
52 入選 曼珠沙華昼の密度となりにけり 小西 瞬夏
79 入選 侍のもう居らぬ城水の秋 山田すずめ
99 入選 青春の終わり水着に穴 金澤ひろあき
111 入選 鍵穴に月光これからのひとり 夏  礼子
130 入選 鉈の切れ指先で読み枝打ちす 仲井タミ江
168 入選 耳朶はやさしきところ吊し柿 西谷 稔子
180 入選 丁寧なことば掛け合ふ菊日和 あめ・みちを
208 入選 試供品のやうに盛りたり零余子飯 青木 美葉
【特選句 選評】
 
香川県にある「どんぐり銀行」のような、どんぐりを通貨に見立てた子供向け施設を想像しました。子供たちの笑顔とともに、見晴らしの良い場所で、爽やかな秋を満喫しているようです
 

高橋 将夫 選

158 特選 老いてなお奥を目指せり茸山 廣畑 昌子
7 次点 決壊の川とも見えず水澄めり 八王寺宇保
183 次点 小鳥来る水の抜かれた池にくる 寺町 容子
18 入選 降雪は夜の深さを知つている 曾根  毅
20 入選 紅萩に身を寄せ人とすれ違う 蔵田ひろし
50 入選 深秋の眠れぬ夜のプラシーボ 宮武 孝幸
61 入選 狸穴に常連戻り新走 松村 和寛
92 入選 路地を出てかなかなと鳴き風になる 丸岡 泥亀
95 入選 銀漢に漕ぎ出す舟の水脈の星屑 秋山 節子
97 入選 樹も石も神宿る国水澄めり 尾崎 竹詩
104 入選 波音は地球の呼吸夜の秋 寺田 須美
163 入選 個も淋し集団も憂し穴の蛇 西田 唯士
【特選句 選評】
 
老いても前向きに生きたいものだが、目指すところが茸山であるところに共感。いまさら華やかな舞台を求めるでもなく、高みをめざすでもなく、茸山の奥だという。派手さではなく、高みでもなく深みを目指すという。
 

花谷 清 選

30 特選 つくねんと机に更けて秋二つ 森本 突張
89 次点 灯しても灯しても出雲は白雨 米岡 隆文
168 次点 耳朶はやさしきところ吊し柿 西谷 稔子
28 入選 鬼やんま乾きし音を残しゆく 山ア  篤
43 入選 ふたかみの山に雲湧く迢空忌 横田 明美
54 入選 秋日濃し喪の合唱のアヴェ・マリア 赤窄  結
60 入選 どんぐりで払えるし見晴らしもよい 木村オサム
107 入選 往古より水音凍てる山毛欅の森 中井不二男
111 入選 鍵穴に月光これからのひとり 夏  礼子
116 入選 赤ん坊に水の重さや月天心 麻殖生伸子
156 入選 直線が直線を追う曼珠沙華 峯  悦子
166 入選 はなゑみの幽けき音や女王花 辻井こうめ
【特選句 選評】
 
特選にいただいた句は、正岡子規が、松山で、夏目漱石 と別れの際に詠んだ<行く我にとどまる汝に秋二つ>を踏まえている。<秋二つ>は、大切なひととの別れを示し、喪失感のなかの夜更けを想像した。
 

鈴鹿 呂仁 選

41 特選 地球という穴から覗く銀河系 今村タケシ
7 次点 決壊の川とも見えず水澄めり 八王寺宇保
140 次点 立て前も本音も秋思秘めており 濱口 宏子
28 入選 鬼やんま乾きし音を残しゆく 山ア  篤
37 入選 県境を越してそのまま穴惑い 中嶋 飛鳥
112 入選 風に色ありてコスモス畑かな 夏  礼子
121 入選 とんぼうのこつんと水を叩きけり 樋本 和恵
147 入選 ジーパンの身に添ふ穴や鰯雲 和田 Y子
165 入選 綿棒のさぐる耳穴秋暑し 辻井こうめ
170 入選 蛇穴に入るカリスマ性をちらつかせ 北村 文江
177 入選 一合の新米を研ぐ水の音 松本 善子
206 入選 糸電話糸をゆるめず居待月 村田あを衣
【特選句 選評】
 
地球は「ほし」と読みたい。地球の穴とは深い言葉であり、今のコロナ 禍の汚染、飢餓、国の内戦等による荒れんだ凸凹の穴であろう。逆に、中秋の空に見る銀河系の美しさとの対比は、ドラマティックな展開と言える 。
 

志村 宣子 選

59 特選 ひとつだけ持ち込める空蛇穴に 木村オサム
55 次点 天の川VS生理食塩水 村井 隆行
124 次点 千年が丸く修まり椿の実 西村 白杼
20 入選 紅萩に身を寄せ人とすれ違う 蔵田ひろし
32 入選 つぎつぎに肺をひろげて曼殊沙華 谷川すみれ
43 入選 ふたかみの山に雲湧く迢空忌 横田 明美
98 入選 信長が大統領なら彼岸花 尾崎 竹詩
104 入選 波音は地球の呼吸夜の秋 寺田 須美
111 入選 鍵穴に月光これからのひとり 夏  礼子
116 入選 赤ん坊に水の重さや月天心 麻殖生伸子
166 入選 はなゑみの幽けき音や女王花 辻井こうめ
208 入選 試供品のやうに盛りたり零余子飯 青木 美葉
【特選句 選評】
 
自分の意志に関わらず尻尾で空を引き摺りながら蛇は穴に入り冬眠する。冬眠の穴倉は小さな宇宙となり空には星座が輝くだろう。長い眠りの中、夢を見つつ命を温めながらひたすら春を待つのだろう。
 

岡田 耕治 選

156 特選 直線が直線を追う曼珠沙華 峯  悦子
28 次点 鬼やんま乾きし音を残しゆく 山ア  篤
84 次点 落花生日本家屋は佳く燃ゆる まんぷく
32 入選 つぎつぎに肺をひろげて曼珠沙華 谷川すみれ
44 入選 太陽にもっと近づきたい檸檬 横田 明美
116 入選 赤ん坊に水の重さや月天心 麻殖生伸子
121 入選 とんぼうのこつんと水を叩きけり 樋本 和恵
136 入選 秋夕日ぼこっと海に吸いこまれ 辻本 孝子
161 入選 葛城の水の納まる青田かな 内田  茂
168 入選 耳朶はやさしきところ吊し柿 西谷 稔子
177 入選 一合の新米を研ぐ水の音 松本 善子
216 入選 君も僕も軍国少年亀鳴けり 八木 健夫
【特選句 選評】
 
曼珠沙華は曲線に開くが、作者はその曲線の中に「直線」を感じ取った。線となって枯れていく様子も、この「直線」には含まれているようで、シンプルだが味わい深い。

西谷 剛周 選

162 特選 夜食には間のあるシャドーボクシング 内田  茂
168 次点 耳朶はやさしきところ吊し柿 西谷 稔子
183 次点 小鳥来る水の抜かれた池にくる 寺町 容子
28 入選 鬼やんま乾きし音を残しゆく 山ア  篤
38 入選 秋晴れの嘘にふくらむ鼻の穴 中嶋 飛鳥
52 入選 曼珠沙華昼の密度となりにけり 小西 瞬夏
97 入選 樹も石も神宿る国水澄めり  尾崎 竹詩
111 入選 鍵穴に月光これからのひとり 夏  礼子
116 入選 赤ん坊に水の重さや月天心 麻殖生伸子
124 入選 千年が丸く修まり椿の実 西村 白杼
141 入選 軽さうに水車を回す春の川 橋 将夫
147 入選 ジーパンの身に添ふ穴や鰯雲 和田 Y子
【特選句 選評】
 
ボクシングで、相手を想定して一人でフットワークやパンチなどの練習をするのを、シャドーボクシングというが、夜食からプロでないことが分かる。ダイエットのつもりなのだろうが、食欲の誘惑に勝てない。

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