第1回「上方きめら句会」作品集(2020年7月5日更新) この中より3句選句してください 1 銃弾はいま放たれた蝉の昼 2 疫病を避くる一人のソーダ水 3 医師の名も術日も忘れ苔茂る 4 金糸梅黄泉へ呼ばれてゆく母と 5 中村哲の轍ゆきけり蟻の列 6 黒南風に指サックからくる睡魔 7 イエダニを吸ひ取るといふ高性能 8 あぢさゐのひかりに皺の手をかざす 9 万緑の胎内巡る九十九折れ 10 植田はや峡の夕風とらへをり 11 悪名のみるみる染まる心太 12 ミステリーに飽きてしまった黒揚羽 13 3秒で振られた私夏木立 14 雑貨屋はバス停兼て里青葉 15 夏至の日の燻製作りはモヒートと 16 雨粒に触れて梔子ほどけゆく 17 温顔の濃く焼き付きし紫陽花雨 18 まだ消えぬ悔い蛍のかたちして 19 人魚塚夏鶯が高らかに 20 夏近し疵の乳房が軽くなる 21 さくらんぼ君もさいごはひとりだよ 22 一羽遅れピチョパチョ水面を来る子鴨 23 メロンごろんときどきフェイクニュースかも 24 リアリティの無限展開夏祓 25 青葉木菟見えざる空に手をかざす 26 荒梅雨や溝の傷みしビートルズ 27 熊蝉やひとを狂わす周波数 28 無個性じゃいけないと知る冷奴 29 名残り酒あじさいも融けし夜なりき 30 恋愛や気狂いピエロめく蛍 31 葛餅のやがて女に成り済まし 32 夏草に囲まれルービックキューブ 33 梅雨深し刀剣にみる鍛え肌 34 こんな家族ならば冷奴にならう 35 かきつばた写楽の謎は解くまいぞ 36 蕎麦啜る夏の木立を真向かひに 37 ががんぼよ目立たぬように死にに来い 38 夏草やペダル踏み込む日焼け顔 39 注射後の指圧止血に青葉光 40 紫陽花を逆さに吊るすおまじない 41 人間と話さなんだ日さくらんぼ 42 鏡には前世で逢つたやうなわれ 43 湧き上がる誇りと未練と老鶯啼く 44 百万の馘首無残や牡丹百合 45 白髪のバリスタ春ストーブのログハウス 46 妻の立つモネの反り橋白日傘 47 金魚屋さん昔役者をしてたとか 48 雲間より光一瞬山開き 49 五月闇マと書いた紙貼っておく 50 夏の川誰も知らずに犬育つ 51 ぬれぎぬを着て梅干になっている 52 壊さねば壊してならぬ血を出す蚊 53 葉書来る梅雨の湿りを帯びてゐて 54 薄暑光障子の切り絵又も増え 55 荒梅雨やメタセコイヤの尖りやう 56 風薫る冷やでいただく地酒かな 57 露坐仏の目まで濡らして夕立過ぐ 58 梅雨寒し人体模型の渾名とか 59 冷蔵庫中身は個人情報です 60 本棚の後ろに居たり夏帽子 61 二日目のスープ煮詰めて梅雨の寒 62 雨中梔子朽ちつつ宙に香を広ぐ 63 梅雨晴や各馬一斉ハイウェイ 64 梅雨の月手首のタトゥー動き出す 65 短夜の文豪に聴く死の未来 66 ジョギングの胸の高さへ梅雨蛍 67 梅雨明けてトランペットで吹くエール 68 ピーヒョロロ鳶は南風に身を任せ 69 コロナ第2波べったり歩道の捨てマスク 70 田鰻の穴に土塊田水張る 71 相続の捨印三つ梅雨晴間 72 手話の手の嘘つく小指はじき豆 73 十指のイナヅマ盲目のピアニスト 74 青梅や兜太に頼る句ばかりで 75 ぷかぷかを悩むくらげに陽が届く 76 青き雨茶渋を落とす母の家 77 朝日満つ峡の代田は万華鏡 78 青梅や疫病漬けの百ヶ日 79 父の日に磨く遺品の腕時計 80 あやめ草昏き水面へ崩れゆく 81 赤松のひかり零るる青葉かな 82 持っている方がびちゃびちゃ水鉄砲 83 万緑の全葉讃ふ地球の気 84 嵯峨トロッコ列車再開今は梅雨 85 青春はコップに浮かぶさくらんぼ 86 梅雨晴間腕立て伏せを深く深く 87 夕風や初蚊膨れてとびゆけり 88 七夕や螺鈿の机贈りたし 89 すべりひゆ母を遠野に置きしまま 90 人間を無名化数値化半夏生 (以上 全90句) |