関西現代俳句協会

関西現代俳句協会第5回定例句会開催

 

 平成29年7月29日(土)午後1時よりヴィアーレ大阪に於いて第5回の定例句会を開催した。参加者は事務局5名を含め44名であった。
 当季雑詠句を各自3句提出。会員は3句選・選者は10句選をお願いした。因みに選者は関西現代俳句協会の選者で高橋将夫氏・谷下一玄氏・西谷剛周氏・花谷清氏・的場秀恭氏・吉田成子氏の6名であった。尚第6回は平成29年9月30日(土)にヴィアーレ大阪で開催する。

 

 参加者全員の作品を掲載いたします。(50音別)

   流燈の行きつく先をたれも知らず    天谷 翔子
   夏果てのテラス煙草の灯がひとつ
   その中の真紅の薔薇に呼ばれけり

   雲の峰傘を閉ぢたり開いたり      上田千恵子
   滝しぶき濁世を払ふ神のあり
   羽織るもの探す車中や夏の空

   俎も神棚も無き終戦日         上藤おさむ
   ががんぼの足を数えて衰へる
   拭ひたる古き地球儀原爆忌

   片陰に入りきらざる肩怒る       内田  茂
   誰も居ぬ茶の間に晩夏蹲る
   踊子の何かに沸きし控の間

   箍外れ解き放さるる生身魂       江島 照美
   弾劾の驕りの恐さ初嵐
   握り締められぬ胡瓜の新鮮さ

   庭花火手暗りなる昭和かな       大西 陽子
   自転車のペタルもどして漕ぎし夏
   誰のものでもないてっぺんかき氷

   祭終え電信柱だけ残る         音羽 和俊
   抱接の闇や目瞑るひきがえる
   花火の夜蠢くものの中に父

   いち日の日暮ひき寄せ鱧の皮      川﨑 奈美
   灼熱の天空鳥の飛ぶちから
   月下美人こよひ一花の漏れもなし

   山の日の自問自答の登山道       河口久美子
   新種かな一花に五色夏の菊
   平尾逝く霧の摩周湖向かふバス

   滝壺に落ちたる水にある安堵      北村 峰月
   三竦みの私と妻と雲の峰
   水と言ふ器に目高受け取りぬ

   核廃棄お花畑の種ひらう        木野 俊子
   夕立の一粒日本国憲法
   短夜や金持ちの家よく紛める

   かき氷だんだん舌の痩せてくる     熊川 暁子
   間が持てずグラスの汗を指で拭く
   炎天をかろがろ来たり督促状

   蟇声を出さねば老いてゆく       桑田 和子
   真っすぐに行けば駅です白日傘
   尺蠖のその一途さよ愚かさよ

   鮎釣りの魚籠に二三の影のあり     桑田多恵子
   向日葵は楽天家得意は笑顔
   山径の石仏の笑み晩夏光

   原爆忌人は自由の水を飲み       志村 宣子
   喋らないペアールックのレモン水
   目鼻なきマネキン並ぶ街薄暑

   遠雷や首相夫人を売りにくる      翠  雲母
   向日葵や記憶にないとしなだれる
   原子炉の三機の間抜け烏瓜

   無量寿の宇宙の中の蟻地獄       高橋 将夫
   木下闇のっぺらぼうが振り返る
   鵜篝の消えて漂ふ魚の魂

   水無月やその切り口の小気味良し    谷口 道子
   分断や蜥蜴の太き縞模様
   花梔子白目に皺の加齢とや

   手花火のあと一本にみんなの目     谷下 一玄
   梅雨明けの朝の存問雀かな
   身をいとふやうに文来る朝曇

   河鹿鳴く鬼は盥を揺らしつつ      樽谷 寛子
   真清水や龍神ウインク今が今
   涼しさをハモっています小鳥たち

   戦中戦後蝗変らぬ色のまま       千原 恭子
   野坂忌やドロップの缶振りずめに
   台風一過手の窪に受く化粧水

   裾まくり金魚すくいの輪の中へ     永田  悠
   温暖化列島すっぽり熱中症
   羅やビリケンさんの苦笑い

   夏の朝ヤンキー座りのヨガポーズ    永田 良子
   夏休み下校のチャイム休みなし
   空蝉の階段のぼる姿して

   舷に形代の貼り付いてをり       中西 厚子
   片蔭を遮ぎってをる水子地蔵
   砂浜に単足袋の形続きをる

   にいにいもくまもあぶらもみんみんも  中俣  博
   大仏殿解除会の茅の輪慎ましく
   すててこを納得したる妻の留守

   のりしろは余白か闇か蝉時雨      西川 吉弘
   己が名を知らぬまま果て
   日日草けさの命のあわれかな

   タンゴはラ・クンパルシータ喜雨踊る  西田 唯士
   夕焼や道草の散るランドセル
   あやふやを確信に墓洗いけり

   目打打つ土用鰻に似たおやじ      西谷 剛周
   ひらがなで口説く真夏のハイボール
   車前草は頑張る力貧さも

   丑の日は蒲焼ありぬ病院も       野村 朴人
   海静かサーファー倒れ沈めども
   祭囃子大阪締めで終りけり

   蕺草干す仕事受け継ぐ三逮夜      橋本 昭一
   針山の針まで錆びて竹すだれ
   人も橋も黄昏時の百日紅

   白蓮のあらゆる色を拒む艶       花谷  清
   伐折羅に目を逸らされる涼しさよ
   スクランブル・ジャミング炎昼のソロ

   たましひの戻り損ねし昼寝覚      樋本 和恵
   恐竜の卵皹入る北の雷
   鳳作に惚れて梅干す男かな

   白絣女に見せぬ裏の顔         平井芙美子
   夕焼や棚田に遊ぶ風の声
   光から闇へうねりの青田風

   花火なら胸の奥にもひとつある     藤本  晉
   汗噴いて七十三の残り水
   揺らめいて鉢の金魚の貌歪む

   湖暮れて母の忌日の月見草       本郷 公子
   水掛け不動へ水の届かず炎天下
   草いきれ喉渇ききる午後三時

   ほととぎす村がまるごと消えてゆく   前田  勉
   黙祷の萬の爪痕蝉しぐれ
   天蓋の傾いている暴れ梅雨

   風の字を二つに分けて夏のれん     松島 圭伍
   風誘ひ風より軽き糸とんぼ
   ヨットの帆弧を深めつつ海原へ

   守るものなし炎天の大鳥居       的場 秀恭
   思案またうやむやになる熱帯夜
   ままならぬ独りの煮炊きトマト切る

   不器用な返事金魚の泡ひとつ      村田あを衣
   童心は後生大事に浮いて来い
   わが家系辿れば庶民バッタとぶ

   蝸牛つひに一線越えにけり       森  一心
   切り札はつひに切らずに心太
   落城の十秒前のかき氷

   良き風に音色正せり江戸風鈴     山崎よしひろ
   阿より吽へ連綿の書写文字摺草
   よく笑いよく泣く人やさくらんぼ

   遠景も近景も揺れ町炎暑        吉田 成子
   麦茶飲むほどに眼の眩む日
   夏深き昨日の今日の死亡欄

   青鬼灯体内電池充電中         吉村紀代子
   われ探すあなたを探す扇風機
   送り梅雨句心滾らす額皺

   堂と老いて甚平似合ふ顔        和田 燁子
   闇の空弾ける音の花火かな
   蒲の穂のぶつきらぼうに立つ高さ

 (以  上)

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