関西現代俳句協会

関西現代俳句協会第4回定例句会開催

 

 第4回定例句会は、平成28年10月29日(土)午後1時よりホテル ヴィアーレ大阪に於いて開催した。 参加者は42名であった。
 全員が当季雑詠を3句出句、会員は3句選・5名の選者は10句選とした。
 なお選者は、高橋将夫氏、谷下一玄氏、西谷剛周氏、的場秀恭氏、吉田成子氏の5名の方にお願いした。 

 

 参加者全員の3句を掲載します(50音別)

   秋湿り草木吐息を漏らしけり      有馬 映子
   保護色の魚整列や水の秋
   一万歩が今日のノルマや秋天下

   紅葉山攫れまいと踏む大地       石井 和子
   薄紅葉父母在す小さき山
   草紅葉身を寄せ合いし真旅かな

   四五人の頭の消えてゆく芒原      上田千恵子
   少年の靴泥まみれ竹の春
   秋逝くや砂場の人形独り言

   あまた引く線の裸婦像十三夜      上野乃武彌
   洋上に黒き血を吐く秋夕焼
   秋の夜や亭主加はる長談義

   人間は灰になります秋の雲       上藤おさむ
   秋の夜や噂供養の酒を飲む
   狗尾草凭れ合ひたる余生かな

   被災地の風が棲みつく猫じゃらし    大西 陽子
   風に乗る声の触れあう秋桜
   アイロンの戦艦のごと鰯雲

   神送る浜の火柱高くして        岡野多江子
   金色の一葉を底に水澄めり
   秋惜しむ根付の亀のいきいきと

   道草や夢をたぐれば烏瓜        小川 桂子
   ど忘れの一字もどかし小六月
   躙り口少し明けをく良夜かな

   渡る鷹空の一点より溢るる       音羽 和俊
   ひとり一人に囁く長き夜のラジオ
   木犀の香や眠らずの仏の目

   蛙忌に腹のへそが笑い出す       葛城 裸時
   虹だからゲリラ豪雨はペンキ雨
   煙吹くマッチとライターが秋思する

   木の実降る移動図書館椅子二つ     河口久美子
   右耳鳴り左音楽夜長し
   恥かしや席譲らるる秋の朝

   山霧や神酒供へある登り窯       川ア 奈美
   通過待つ短かきホーム草の絮
   白粥のしばらく滾る朝の鵙

   小鳥来て夫婦の会話はじまりぬ     熊川 暁子
   こほろぎの鳴くとき風の弛むとき
   一天を使ひ切ったる大花火

   秋の蚊の人のぬくみをはなれ得ず    桑田 和子
   夜学子のいつもの車輌いつもの席
   島々をつなぐ吊り橋鳥渡る

   啄木の表紙の匂ふ秋の暮        志村 宣子
   下枝に秋日分けあふ神の杉
   奪ひ合ふ木の実は人を逃げてゆく

   赤い羽根つけた人から付けらるる    高橋 将夫
   頬杖をつけば秋思と思はれり
   反骨や余生いよいよ爽やかに

   天日をとどめ十月さくらかな      谷下 一玄
   青きものまじへ雑多に木の実落つ
   忘れられさうなところに鵙の贄

   復活の河内木綿の今年綿        田宮 尚樹
   水澄めり人の傷みを識るやうに
   やがて来る死を躱すべくひょんの笛

   青柿や上がり框に臀ふたつ       樽谷 寛子
   露草や嗣治が猫抜け出した
   秋薔薇連弾好む少女かな

   月を出て二円切手の兎かな       千原 恭子
   坐すということなきこけし秋の宵
   文化の日ガレージセールの時計鳴る

   倒木の菌つれなく並び立ち       中嶋 飛鳥
   弔いの足首掴むきりぎりす
   借景の庭や野兎まかり来て

   もったいない林檎の皮を剥くなんて   中俣  博
   鉢植えの稲穂一升瓶で搗く
   長き夜やよくぞ女に生まれけり

   残る虫寝つかれぬ夜は長かりき     西川 吉弘
   螻蛄鳴くや墓標の中の赤き文字
   神となる山車の屋根飛ぶ男達

   菊花より大きリボンの審査員      西谷 剛周
   衣被半分脱いでいるつもり
   竹串の削り香残る子持鮎

   ジーンズの秋思の出入り穴幾つ     西田 唯士
   落書の神や木の葉に赤黄色
   華やぎの名をしゃきと研ぐ今年米

   秋灯下父母のこと子に語る       野村 朴人
   蒲焼きと言ふも秋刀魚やよく匂ふ
   天使らの競へるごとし菊花店

   いつ見ても空の凹みにゐる蜻蛉     樋本 和恵
   両の手に夜寒が宿る茹卵
   林檎食ぶ魔女の私とお化けたち

   秋の冷白き雲より至りけり       平井芙美子
   臈たくる実むらさきこそ危ふかり
   天高し眼鋭き鬼瓦

   物音の何やらふえし秋の暮       星川 淳代
   新米やももいろに透く生命線
   ゐのこづち橋の向かふに誰も居ず

   赤い羽根回覧板の真ん中に       堀竹 善子
   青春の揃ひのセーター持て余す
   リュツク負ひ無人駅より紅葉山

   人知れず鈴の内部に木犀の香      本郷 公子
   秋気澄む磨くスプーンの銀細工
   雁や硝子のペンの文字滲む

   継ぎはぎの記憶でもよし菊日和     松島 圭伍
   十月の風十月の膝がしら
   夜はジャズ秋思の指を鳴らしつつ

   生きるとは見えぬ約束木の実落つ    的場 秀恭
   加齢てふ手に負へぬものそぞろ寒
   饒舌は箸立に置き走り蕎麦

   どんぐりの我慢ころころ年長児     三好つや子
   柿たわわ足踏ミシンの音の先
   まなうらのカーブミラーに秋の蝶

   一切を受け入れ暮るる大花野      村田あを衣
   略歴をひとつ増やして鳥渡る
   鳴き砂を返してみては秋惜しむ

   佳きことは人に告げたし鰯雲      森  一心
   マラソン人の大河となりて銀杏散る
   鏡見て我に驚くハロウイーン

   虫の音や夢の世界の挿入歌       森口 和子
   兵馬俑展出て平成の鰯雲
   柚子かりに誘はれひねもす棘の中

   菊日和地図に遊ばす旅ごころ      山浦  純
   合コンと言うべきものに虫時雨
   若冲の鶏も歩まん文化の日

   雨の夜は原人めきて栗を食む      吉田 成子
   枕辺の肌着まつさら冬近し
   菊日和地震の備への水買うて

   さやけしや笙の音に振る巫女の鈴    養学登志子
   秋霖や4Bで書く大きな字
   バーナーの火花散らせる夕時雨

   葺替への志納瓦の光る秋        吉村紀代子
   母のごと小さくなり過ぎ鍋の牡蠣
   ポケットの無き秋服やセツシボン

   一粒もこぼさじと研ぐ今年米      和田 Y子
   ひとつづつ思案に暮れる冬支度
   擦れ違ふ仮装のお化けハロウィーン

 (以  上)

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