関西現代俳句協会

第40回句集祭&平成27年度忘年会

 日 時 : 平成27年12月5日(土)15時10分~19時30分
 会 場 : ヴィアーレ大阪

 写真集はこちらをご覧下さい。

句集祭

 クリスマスツリーが飾られて、華やかさをましたホテルヴィアーレ大阪で開催された。

 パールルームで行われた理事会に引き続き、エメラルドルームで行われた句集祭も上藤おさむ事務局長の司会で、冒頭に本年の物故者への黙祷から始まった。

 吉田成子会長の挨拶
「今回は40回目という一つの節目となった。1年平均20冊の句集をお祝いしたとして、40年で800冊を超えることになり、歴史の重みを感じている。今年の物故者の故和田悟朗さん、故吉本伊智朗さんの句集も出品されていることを記憶にとどめたい。和やかないい雰囲気の会になることを期待している。」

 15点の句集と、7点の句文集等合計22点の披露と句集代表句の披講は、音羽和俊氏によって行われた。
 福嶋雄山氏がカメラを手に記録写真を撮られる中、西川吉弘企画部長により紹介された著作者の挨拶を、以下欠席者等を除いて登壇順に紹介する。

 ① 上森敦代氏
「いつもアイウエオ順で一番になる。第2句集で句集祭は18年ぶり。前回は故桂信子先生の隣に座っていて、他の事は忘れたが先生の楽しそうにされていたご様子を覚えている」

 ② 小野田魁氏
「故和田悟朗先生の『白燕』終刊から『風来』創刊までずっとお世話になった。並行して先生が選者であられた毎日新聞兵庫文芸欄にも投句をしており、先生に選をしてもらった句をまとめた句集である」

 ③ 久保純夫氏
「船越桂氏の画集等に触発され、1つの作品につき春夏秋冬の季語をあしらい『香天』に発表したものを出した。著書名に著作権は生じないと聞いたので、タイトルは好きな坂口安吾の『日本文化私観』からいただいてつけた」

 ④ 古梅敏彦氏
「3冊目である。最初の随筆、2つ目の句集に続くもので、紀三井寺のある名草山の麓に住んでいるので、このタイトルにした。芭蕉の『奥の細道』のような句文集にあこがれている。駄文ではあるが読んでいただければ幸いである」

 ⑤ 圖子まり絵氏
「50年つれそった主人が余命宣告を受けたとき、普段私の俳句に対していい顔をしなかった主人だが、句集出版を勧めてくれた。第1句集出版から10年経過した第二句集である。出版を待つことなく主人は亡くなってしまった」

 ⑥ 鈴木龍生氏
「うぐいす前主宰の急逝に伴い、乞われて長年編集の手伝いをしている。紙面のマンネリ化を避けるために、いいだしっぺの私が池田琴線女主宰の一句鑑賞を平成17年に書き始め、爾来続いてきたものを本にまとめた。今回の出版を区切りとしたい」

 ⑦ 曾根毅氏
「はからずも芝不器男俳句新人賞を頂戴し、その副賞として出した句集である。選考委員をされた方々を存じ上げないので、本日ご来駕の方々で選考委員の方をご存じの方がおられれば、賞をもらって喜んでいたとお伝えください。現代俳句協会は現代の言葉で現在を詠む団体だと思っている」

 ⑧ 谷川すみれ氏
「昨年12月に句集を出し、以来スランプに陥ったが、引き続き勉強は続けていて何とか最近スランプから脱出できた。継続は力であると実感している」

 ⑨ 谷口道子氏
「うすべにこぶたと読む。春になると高知の沖合に現れる桃色の雲で、他の地域の方からもこの雲を見たといわれてうれしかった。金子兜太先生の『今日の俳句』のドラム缶も俳句になるを読んで、俳句をはじめた。河井寛次郎の二行詩 道を歩かない人 歩いたあとが道になる人を信条に生きてゆく」

 ⑩ 中村光影子氏
「着ぶくれの似合うメタボ俳人です。配属された山口県光市の職場句会で俳句に出会った。徳山市に住んでおられた故大中祥生先生を師として迎え、草炎のお手伝いもさせていただき、お世話になった」

 ⑪ 松本恭子氏
「16年ぶりの上梓となった。父の27日の法要の日に装丁が出来上がり、父の本葬の6月25日に上梓した。親不孝だったが少し解消できたかなと思う」

 続いて、故和田悟朗氏全句集の編集を担当された久保純夫氏、藤川游子氏が登壇された。
久保純夫氏
「ご存命中に出版できず、間に合わなかった。この編集を通じて先生が俳句に2回開眼したとおっしゃっていることが判り、うれしかった」
藤川游子氏
「先生の全句集の編集を久保純夫さんがやりましょうとおっしゃっていると伝えると、先生は「本当に?」「頼めるの?」とうれしそうだった」

 続いて、本日欠席された藤井冨美子氏の代理として堀本吟氏が登壇され、「本人に頼まれた代理ではなく、本の解説を引き受けた縁があり、代理でお話しする。この本は藤井冨美子氏の側近の楠本義雄氏の呼びかけで出版することになり、前書きは故和田悟朗先生がお書きになっている。藤井冨美子氏の軌跡が判る本で、ぜひ読んでほしい」

 続いて、小野田魁氏が再登壇され、句集『シリーズ自句自解Ⅱベスト一〇〇』について「俺が俺がと出てくることを嫌っていた故和田悟朗に怒られるかもしれないが、最後の頁に私の作句法が載っているのは、もう先生は自分でお書きになることは出来ず、私を含め弟子たちが先生の口述筆記をしたものではあるものの、先生の絶筆といっても過言ではない」

 最後に花谷清副会長より
「皆さんの挨拶を聞いて、大方の方が第二句集であるとのべられていたことに歴史を感じる一方で、曾根毅氏のように若い力が出てきており、今後楽しみにしている。皆さんのタイトルの付け方に工夫があり、愉しいと思った」との閉会の挨拶が述べられ、定刻より少し早く終了した。

懇親会スケッチ

 午前中結婚式の行われていたクリスタルリームで、中俣博氏の司会により定刻通りに懇親会が開かれた。

 的場秀恭副会長から 「熱気にあふれる句集祭となった。今回で四十回目となる。この句集祭が、各人の一年間の自分の俳句を振り返ってみる場になればよい」

 続いて高橋将夫氏の 「俳句ブームも一段落して低迷している中、着実に高まっているのが会員の平均年齢であるが、いつまでも精神を若く、輝いていたい」の挨拶のあと乾杯となり、懇親会がスタートした。

 宇多喜代子顧問からは 「この句集祭が始まったのは昭和50年で、昭和40年から50年にかけて句集の出版が多く、故鈴木六林男先生の呼びかけでそれまで個々に行っていたお祝いを纏めて年末に行うようになったもので、関西の一つの伝統になっている。年間に70冊も句集が出ていた時もあり、今のような明朝体の懸垂幕ではなく、それぞれ墨書を行っていた。次回の節目として句集祭りが50回目を迎えるときにどうなっているか楽しみである」

 しばし歓談の後、所用で句集祭を欠席された田宮尚樹氏が登壇し「句集名の龍の玉は、輝いている小さな光に奥ゆかしさを感じたからで、代表句は角館に行って枝垂れ桜を仰ぎながら、斉藤茂吉の歌を重ねあわせて、枝垂れ桜に木の心人の心があふれているのを感じ取った」と挨拶された。

 中俣博氏の司会で、次々とだされる料理の合間を縫って、次の方々の挨拶が行われた。以下の通りの登壇順となる。

 『京鹿子』鈴鹿仁氏

 『藍』花谷清氏

 『京鹿子』新主宰の鈴鹿呂仁氏

 『幻』西谷剛周氏

 『獅林』森一心氏

と続き、最後に『蕪の会』尾崎青磁氏の挨拶を持って閉会となった。

 (蔵田ひろし・記)


第40回「句集祭」参加作品一覧
随筆集『不忘一枚連結便㊀ 写俳亭俳話八十年』 
                        伊丹三樹彦
随筆集『不忘一枚連結便㊁ 写俳亭俳話八十年』 
                        伊丹三樹彦
随筆集『不忘一枚連結便㊂ 写俳亭俳話八十年』 
                        伊丹三樹彦
書写句文集『写俳亭の書写句文集《蓮》』
                        伊丹三樹彦
句集『はじまり』                  上森 敦代
新月の氷が水に還る音
句集『虎落笛』                  小野田 魁
木霊からもっとも近き案山子かな
句集『日本文化私観』               久保 純夫
後ろから頭を愛し十三夜
随筆集『名草山麓』
                       古梅 敏彦
句集『笑顔しか浮かんでこない』          圖子まり絵
櫛を捨て簪を捨て蛇穴に
10 鑑賞集『池田琴線女一句鑑賞 琴の音』
                         鈴木 龍生
11 句集『花修』                   曾根  毅
薄明とセシウムを負い露草よ
12 句集『草原の雲―不自由な言葉の自由―』      谷川すみれ
ガソリンの臭いの中の立葵
13 句集『薄紅子豚』                 谷口 道子
春の海薄紅子豚の雲沖に
14 句集『龍の玉』                  田宮 尚樹
木のこころ溢れてしだれ桜かな
15 句集『こんせんと』                寺田 良治
はじめに言葉それから先は蝶
16 句集『雲海』                   中村光影子
着ぶくれて杭一本を打って去る
17 全句集『藤井冨美子全句集』            藤井冨美子
人遠く木の国眩し山ざくら
18 句集『花陰』                   松本 恭子
胸濡らす中国民謡黒金魚
19 随筆集『ちぎれそうなりんごの皮の夜祭り』
                        松本 恭子
20 句集『時は今』                  吉本伊智朗
馬老いて虚空の露を舐めるなり
21 全句集『和田悟朗全句集』 和田悟朗  編・久保純夫 藤川游子
水中に水見えており水見えず
22 自句自解『シリーズ自句自解II ベスト100 和田悟朗』
                        和田 悟朗