関西現代俳句協会

第39回句集祭&平成26年度忘年会

 日 時 : 平成26年12月6日(土)15時10分~19時30分
 会 場 : ヴィアーレ大阪

 写真集はこちらをご覧下さい。

句集祭

 昨年に引き続き、ホテルヴィアーレ大阪で開催された。
 パールルームで行われた理事会に引き続き、エメラルドルームで行われた句集祭も上藤おさむ事務局長の司会。

 吉田成子会長の挨拶
「寒波の中よく集まって頂いた。昨年を上回る数で喜んでいる。2年前に私も句集を出したが、知らない人からおめでとうと言われた事が印象に残っている。面はゆいが頑張ろうと励みになった。皆さんにとってこの句集祭りが思い出になればと願っている。現代俳句協会70年の歴史で、大阪独自の催しである句集祭りは今回39回目である。これからもよろしくお願いしたい」

 続いて上藤おさむ事務局長から
「先ほどの理事会において、議題はすべて滞りなく承認された」旨の報告がなされた。

 18点の句集と、5点の文集等合計昨年を上回る23点の披露と句集代表句の披講は、音羽和俊氏によって行われた。

 以下登壇順に著者の挨拶を紹介する。

 ① 有松洋子氏は杖を突かれての登壇で「亡き親友宅へ贈呈したところ、お姉さんが仏壇に一句一句読み上げてくれたことが一番うれしかった」

 ② 伊丹三樹彦氏は本人欠席ながらメッセージが届けられており、音羽和俊氏が代読する。
「妻の介護のため、外出が難しくなった。現代俳句協会のロゴマークは津根元潮氏の作ではあるが、原案はこの私である」 

 ③ 宇多喜代子氏
「来年10月で80才になるので、区切りをつけるために選集を編んだ。『円心』は、放射能渦の報道で描かれる丸く囲まれているものに不条理を感じてタイトルとした」 

 ④ 岡田由季氏
「炎環に所属して、1998年に東京で俳句をはじめてからの16年間の作品。自分の身の回りを平明な言葉で書いているが、自分のカラー、個性を出したくてこのタイトルとした。俳句をはじめて10年で関西に来たが、所属結社には大阪で開かれる句会がなく、現代俳句協会の青年部のおかげで俳句を続けることが出来た」

 ⑤ かつら澪氏
「初めて参加させてもらった。風樹にお世話になって6年あまりになる。先生や先輩方のおかげで出版できた。先生のおっしゃる言葉を守ってマイペースで歩んでゆきたい」 

 ⑥ 忍正志氏
「この本は自己流に作句、選句したもので、自分の思いを述べた」

 ⑦ 高木智氏は故人であり、奥様の高木晶子氏が代わりに挨拶に立たれた。
「この文集は亡き夫が京鹿子に昭和45年から3年間にわたって執筆したものをまとめたものである」

 ⑧ 田中螢柳氏
「今年の春に内視鏡を使う検査を受けて、勝手に癌だと思い込み、終活のつもりで10年分まとめた。癌ではなかったようで元気である。東大寺二月堂からの眺めが好きで、人生の黄昏の意味も込めて名付けた」 

 ⑨ 恒藤滋生氏
「11月下旬に故鈴木六林男先生の墓参りにゆき、牛滝山の句碑も見て、泉大津の仏壇にも参ってきたが、まだ先生がご存命のような気がしてならない。最近は中部山岳地帯に何か見えてくるものがあるのではないだろうかと、熊を恐れつつも前向きに出かけている」

 ⑩ 中谷清氏
「60才で定年になり、8年間企画、それから10年風樹の仕事をさせてもらっているが、まだまだ勉強不足でまだ早いと思いつつ、生きた証と句集を出すことに踏み切った。未熟ながら諸先輩方のお目通しをたまわれば幸いである」

 ⑪ 中俣博氏
「故桂信子先生主宰、宇多喜代子氏編集の草苑に21年前に入会した。その時から吉田成子氏には句会でお世話になっている。40年間会社勤めをし、それから20年間俳句の勉強をさせてもらっている。先輩や仲間たちに恵まれて幸せであった」 

 ⑫ 藤井美智男氏
「句碑集とあるように伊丹三樹彦氏の句碑の写真集であるが、お誘いを受けて句集祭りに喜んで参加させてもらった。句碑の写真だけでは薄いので、句碑に関係する人たちのエッセーも交えて今年の8月に出た。句碑は石に刻んだもので一生残るものである」

 ⑬ 宮田武彦氏
「もともと俳句を読むのが好きで、次第に俳句を作るようになり、サンケイ教室に入会して教えてもらった。数えで80才のけじめの年であるので、人生の記録としてまとめた」

 ⑭ 森田ていじ氏
「句集名はあすなろのことである。大腸癌となり、私の周りの人も大方死んでいるが、なぜか私が生き残っているのは運なのだろう。癌はリンパに転移していたが、三途の川を渡るときにあの世の亡き姉にまだ早いと言われ、この世に戻ってきた。浦島太郎の心地がする。明日は健康になろうとの思いで、『翌檜』とした」 

 ⑮ 吉本宣子氏
「近江八幡から初めて参加させてもらった。俳句は表現が難しい。故鈴木六林男氏の手ほどきを受けたものを生かして、批評精神のある現代俳句を読んでゆきたい」 

 ⑯ 若森京子氏
「第六句集である。これまで出した句集もすべて着物にかかわるタイトルであった。それをすべて『箪笥』にしまいこむつもりでこの名前をつけた。」 

 最後に若森京子副会長より
「句集を編むのはエネルギーがいる。年末にお祝いをするというのはうれしいことである。句集は作者の人生そのものであり、人となりがでる。来年から初心にかえり、句つくりに励みたい」との閉会の挨拶が述べられ、定刻より早く終了した。

    

懇親会スケッチ

 クリスタルルームで行われた懇親会は、「5時から男の」と軽く聴衆を笑わせながら吉田星子氏の司会で始まる。

 吉田成子会長から 「会長になって2年目で、まだなれない。挨拶は短い方がよいので、存分に祝宴をお楽しみください。」

 的場秀恭副会長の乾杯の発声で懇親会が始まる。

 テーブル八席の華々しい祝宴で、続いて登壇された宇多喜代子前会長からは
「今年で句集祭りも39回目となる。これは昭和52年頃それまでは毎年70冊くらい句集が出版されていたのを、それぞれ個別にお祝いしていたのでは大変とのことで、故鈴木六林男先生がお世話くださり、大阪独自の催しとして開催されるようになったものである。句集を出すのはお金がかかるのであるが、岡田由季さんの例のように、現代俳句協会の青年部がいわばボランティア的に動いて、編集・校正まで一貫して行い、安く出版できるようになっているので、ご利用ください」

 続いて豊田都峰顧問は
「俳句は自分史である。宇多喜代子さんの選集にみられるように、記録の意味でその俳句を作った年号を記載するのがよい。近ころ現代代俳句協会の編集で『昭和俳句作品年表』を出版した。そのための資料という観点からも、又、自分史という観点からも入れるべきであると実感している。」

 ここで宇多喜代子顧問より
「『昭和俳句作品年表』はかなり好評で、この11月にその続編となる昭和20年以降昭和45年までをまとめる会議を始めた。故人の作品で何年に出来たのかが判らない句も多く、ご存じの方は教えてもらいたい。」
との補足も入り、祝宴となる。

 スピーチの合間を縫うように、福島雄山氏がカメラを手にして、和気藹々とした懇親会の各テーブルを回り、出席者全員の写真を撮りまわられる。

 祝宴中飛び入りも交えながら、吉田星子氏の司会で、各所属俳句会からの挨拶が行われた。以下の通りの登壇順となる。

 『渦』赤尾恵以氏

 『藍』花谷清氏

 『獅林』的場秀恭氏

 『大阪俳人倶楽部』鈴鹿呂仁氏

 『儒艮』久保純夫氏

 『槐』高橋将夫氏

 『駅』谷口洋氏

 続いて青年部からは、『豈』岡村知昭氏

 『季流』西川吉弘氏

 『頂点』日原輝子氏

 『蕪の会』尾崎青磁氏

 『一粒』中井不二男氏

 『南海俳句会』古梅敏彦氏

 『半夜』谷下一玄氏

 と飛び入りも含め、14名の方々のスピーチが続いたのちに、花谷清副会長の閉会挨拶があり、6時45分に閉会となった。

 (蔵田ひろし・記)


第39回「句集祭」参加作品一覧
句集『緑光』          有松 洋子
心にも浮力ありけり冬北斗
写俳集『ガンガの沐浴』      伊丹三樹彦
裸童は丸洗い ガンガへ手伸べの母
写俳集『黄土の国びと』      伊丹三樹彦
海知らぬ太陽落す 黄土の国
句集『宇多喜代子俳句集成』
                    宇多喜代子
句集『円心』             宇多喜代子
石上に置く透明な夏帽子
文集『桂信子文集』  
                   編・宇多喜代子
句集『犬の眉』            岡田 由季
空蟬を集めすぎたる家族かな
句集『銀河鉄道』           かつら 澪
秋夜いま銀河鉄道星へ発つ
句集『鶺鴒』              川口ますみ
陽だまりは憲法の席シクラメン
10 句集『やまうど』            忍  正志
路地の奥「独活」の字面に惚れました
11  論集『京鹿子叢書断章』 
                    髙木  智
12  エッセイ集『古都暮色』  
                    田中 螢柳
13 句集『花象』              塚原  哲
わが死後の夕日とどまり葱坊主
14 句集『水分』              恒藤 滋生
水分の八方に散るさくらかな
15 句集『香芝春秋』           中谷  清
初夢のペガソス翔ける天の果て
16 句集『春雷』              中俣  博
春雷の天の地団駄やも知れず
17 句集『花暦』              西原 三春
鳥渡る一直線のこころもて
18 句碑集『句碑巡礼 伊丹三樹彦・公子句碑点描』
                   写真・藤井美智男
19 句集『紀伊日和』           満田 三椒
夏雲の継ぎ目で跳ねる機内食
20 句集『海市』              宮田 武彦
木洩れ日のなか色鳥の枝移り
21 句集『翌檜』              森田ていじ
設計室蟻みな親父顔でくる
22 句集『木の春』             吉本宣子
躁の蠅鬱の蠅夏旺んなり
23 句集『簞笥』             若森京子
寒鯉や簞笥の底に澱むもの