第49回現代俳句全国大会
第49回現代俳句全国大会は2012年10月27日(土)、ホテルグランヴィア大阪において、大会254名、講演聴講者270名、懇親会186名の参加を得て、午後1時より午後7時30分まで盛大に催された。
(1)開会の挨拶
大会は尾崎青磁大会事務局長の開会宣言及び司会団の紹介により始まり、寺井谷子現代俳句協会副会長の開会の言葉に引き続き、宮坂静生会長並びに豊田都峰大会実行委員長、相原洋毎日新聞社代表より挨拶があった。
(2)協会各賞の顕彰
続いて協会各賞の顕彰が行われ、鳴戸奈菜顕彰部長より各賞の選考経過報告があった後、受賞者に表彰状、副賞の授与、花束の贈呈があり、受賞者より受賞の言葉をいただいた。各賞の受賞者は次の通りである。
| 第30回現代俳句新人賞 |
「ゲルニカ」 |
中内 亮玄 |
| 〃 |
「銀河系」 |
柏柳 明子 |
| 第31回現代俳句評論賞 |
「象を見にゆく」 |
松下 カロ |
| 第13回現代俳句協会年度作品賞 |
「沈黙は距離」 |
中村 克子 |
(3)大会各賞の顕彰
大会各賞は、応募作品総数15,231句から、予選通過作品5,077句を一般選者127名が選句し、更に上位368句を特別選者25名が選句し、大会賞2句、毎日新聞社賞1句、特別選者特選賞25句、秀逸賞15句、佳作賞50句、計93句の受賞句を決定した。大会三賞の受賞句と受賞者は次の通りである。(受賞句一覧はこのページの下位に別途掲載しております。)
大会は入選作品93句の披講、宮坂会長、宇多喜代子特別顧問、安西篤副会長、豊田実行委員長による講評があった後、大会三賞受賞者に表彰状、副賞の授与、花束の贈呈があり、受賞者より受賞の言葉をいただいた。
| 大 会 賞 |
にっぽんの形に曲がる胡瓜かな |
山本 敏倖 |
| 大 会 賞 |
陽炎になるまで母に手を振りぬ |
前田 勉 |
| 毎日新聞社 賞 |
塗りたての畦のやうなる嫁もらふ |
今田 草水 |
(4)講演
講演は当初「関西と俳句−思い出を込めて」の題で、金子兜太現代俳句協会名誉会長により行われる予定であったが、金子名誉会長が大会直前に体調を崩され来阪出来なくなったため、急遽代役をお願いした宮坂静生会長により「昭和の俳句・これからの俳句」の題で約90分の講演が行われた。
宮坂会長は下記の順に得意の地貌論を展開して、昭和俳句を展望すると共に、これからの俳句のあるべき姿を模索し、その聞き応えのある見事な論は会場を埋め尽くした聴衆を魅了した。
1.中央(都)志向から地貌の発見
2.沖縄への視点
3.戦後俳句−ヒューマニズムの時代
4.ポスト戦後俳句−伝統回帰とアニミズム模索へ
「昭和の俳句・これからの俳句」講演要旨
講演の後、加藤瑠璃子現代俳句協会副会長の次期大会についてのお話し、前田弘幹事長の閉会の言葉があり、盛大な拍手を以て終了した。
(5)懇親会
懇親会は、吉田成子関西現代俳句協会副会長の開会の言葉の後、和田悟朗顧問の乾杯のご発声により始まった。
会は鈴鹿呂陣仁関西現代俳句協会理事、東珠生さんの司会により進行し、その都度、指名された皆さんが壇上に上り、ユーモアたっぷりの楽しいお話をされ、会場を沸かせた。
会は円卓を囲んでのテーブル形式の会食で、皆さんはホテル特製の美味しいお料理の数々を堪能し、お酒と楽しい会話に酔いしれた。また、各テーブルを巡っての交歓も盛んに行われ、各所で和気靄靄とした和やかなで賑やかな交流の輪が花開いた。
そして、会もたけなわの午後7時30分頃、小泉副会長の閉会の言葉により懇親会はお開きとなり、6年振りに関西で開催された第49回現代俳句全国大会は全ての式次第を滞りなく無事成功裡に終了し、閉会した。
(前田霧人記)
■第49回現代俳句全国大会受賞句一覧
| 大 会 賞 |
にっぽんの形に曲がる胡瓜かな |
山本 敏倖 |
| 大 会 賞 |
陽炎になるまで母に手を振りぬ |
前田 勉 |
| 毎日新聞社 賞 |
塗りたての畦のやうなる嫁もらふ |
今田 草水 |
| 金子 兜太特選 |
ほんたうの雲を見てゐる原爆忌 |
永井 良和 |
| 宇多喜代子特選 |
草を引くときどき海を眺めては |
大牧 梢 |
| 宮坂 静生特選 |
村棄てし人らつどいて里神楽 |
安西 篤 |
| 森下草城子特選 |
耕してひねもす鳶の輪を出でず |
柏原 才子 |
| 田中 不鳴特選 |
短夜の明日切る乳房抱き寝る |
林 すみ |
| 寺井 谷子特選 |
日本に八月が来る柱かな |
篠原 信久 |
| 安西 篤特選 |
噴水の天辺にある自由律 |
河口 俊江 |
| 加藤瑠璃子特選 |
一匹のあと全山が蝉になる |
東金 夢明 |
| 高野ムツオ特選 |
死ぬために生きて八月やってきた |
あべまさる |
| 前田 弘特選 |
ほうれん草たっぷり茹でてからは暇 |
浅見 敏子 |
| 相原左義長特選 |
ひっそりと地に落ちてゐる?の穴 |
田村 正義 |
| 石田よし宏特選 |
生き生きとまいにち老いて冷し酒 |
斎藤 一平 |
| 大坪 重治特選 |
はつなつの皇后にこそ金環食 |
岡崎 淳子 |
| 大西 静城特選 |
はつなつの皇后にこそ金環食 |
岡崎 淳子 |
| 大山安太郎特選 |
父の日の長生きと云う大仕事 |
相沢 幹代 |
| 小宅 容義特選 |
大根を煮れば煮るほど老いてゆく |
塩谷美つ子 |
| 河村 四響特選 |
向日葵のうしろは暗い海である |
森 壽賀子 |
| 倉橋 羊村特選 |
肝据ゑてからが晩年蟇 |
中島修之輔 |
| 豊田 都峰特選 |
サーカスの象もさくらも咲きにけり |
井上菜摘子 |
| 野間口千賀特選 |
あの日から父は海市に行ったきり |
渡邊 淳子 |
| 花谷 和子特選 |
巴旦杏人壊れるに音のなし |
黒田 崖 |
| 前田吐実男特選 |
初蝉や大人のオムツ買ひに行く |
西村 安子 |
| 山ア 聡特選 |
天牛の逃げて絵日記終りけり |
大塚 正路 |
| 吉田 未灰特選 |
春田打つ遠嶺に深く辞儀をして |
金子 野生 |
| 和田 悟朗特選 |
巴旦杏人壊れるに音のなし |
黒田 崖 |
| 秀 逸 賞 |
鳥帰る空にも曲り角がある |
原田 麦吹 |
| 秀 逸 賞 |
冬瓜とともに途方に暮れてゐる |
北邑あぶみ |
| 秀 逸 賞 |
しぐるるや瓦礫に針の無い時計 |
井手 直 |
| 秀 逸 賞 |
すずなすずしろだんだん母に近くなる |
紺谷 睡花 |
| 秀 逸 賞 |
短夜の明日切る乳房抱き寝る |
林 すみ |
| 秀 逸 賞 |
田水張る地球の水のこぼれぬよう |
永田タヱ子 |
| 秀 逸 賞 |
一億が蟻となりたる昭和かな |
津森 敏伸 |
| 秀 逸 賞 |
向日葵のうしろは暗い海である |
森 壽賀子 |
| 秀 逸 賞 |
東北の大きな更地稲びかり |
安田 直子 |
| 秀 逸 賞 |
巴旦杏人壊れるに音のなし |
黒田 崖 |
| 秀 逸 賞 |
あたたかや戦車のやうな兜太来る |
小菅 白藤 |
| 秀 逸 賞 |
耕してひねもす鳶の輪を出でず |
柏原 才子 |
| 秀 逸 賞 |
初蝉や大人のオムツ買ひに行く |
西村 安子 |
| 秀 逸 賞 |
鈍感でいい八月の木がいっぽん |
青木 一夫 |
| 秀 逸 賞 |
東北のまだ濡れてゐる魂迎へ |
宇佐見輝子 |
| 佳 作 賞 |
植田から男が風を脱いで来る |
野口 京子 |
| 佳 作 賞 |
教科書の隙間に水着押し込めし |
石川まゆみ |
| 佳 作 賞 |
ほんたうの雲を見てゐる原爆忌 |
永井 良和 |
| 佳 作 賞 |
短夜のずいぶん奥で牛が哭く |
中内 亮玄 |
| 佳 作 賞 |
生き生きとまいにち老いて冷し酒 |
斎藤 一平 |
| 佳 作 賞 |
やわらかくなるまでいたい蛍の夜 |
前田 花野 |
| 佳 作 賞 |
母の日の母は畳を拭いてをり |
いずみ 愛 |
| 佳 作 賞 |
耕しの一人に夕日大きかり |
奥津 昇 |
| 佳 作 賞 |
なみなみと富士を抱える水田かな |
中原 善江 |
| 佳 作 賞 |
梅干して何処にも居ない母が居る |
木下 蘇陽 |
| 佳 作 賞 |
はつなつの皇后にこそ金環食 |
岡崎 淳子 |
| 佳 作 賞 |
大根を煮れば煮るほど老いてゆく |
塩谷美つ子 |
| 佳 作 賞 |
土筆伸ぶ人の戻らぬ町となり |
赤木 和子 |
| 佳 作 賞 |
母の日を棒のごとくに母でいる |
田中いすず |
| 佳 作 賞 |
生き方のあとは逝き方蝉の穴 |
小泉八重子 |
| 佳 作 賞 |
さくらさくら忘れ上手に老いて行く |
河村 正浩 |
| 佳 作 賞 |
父の日の長生きと云う大仕事 |
相沢 幹代 |
| 佳 作 賞 |
ぶら下がるだけの鉄棒蝉時雨 |
小原 勝 |
| 佳 作 賞 |
日の丸の裏も日の丸万愚節 |
熊谷 山里 |
| 佳 作 賞 |
往きし日も骨還る日も曼珠沙華 |
上野 昭子 |
| 佳 作 賞 |
一匹のあと全山が蝉になる |
東金 夢明 |
| 佳 作 賞 |
花の雲さして遠くはないかの世 |
岡崎 淳子 |
| 佳 作 賞 |
草を引くときどき海を眺めては |
大牧 梢 |
| 佳 作 賞 |
敗戦日おとこはみんな沖を見る |
保坂 末子 |
| 佳 作 賞 |
春田打つ遠嶺に深く辞儀をして |
金子 野生 |
| 佳 作 賞 |
たくさんの明日が詰っている柘榴 |
小林 夏冬 |
| 佳 作 賞 |
少しずつこの世とはぐれ河骨咲く |
米崎璃津子 |
| 佳 作 賞 |
生も死も白を着るなり青山河 |
万城希代子 |
| 佳 作 賞 |
肉体のなき軍服が泳ぎ着く |
北迫 正男 |
| 佳 作 賞 |
八月の真水ごくりと生きている |
永田タヱ子 |
| 佳 作 賞 |
八月の柱に残る昭和の釘 |
橋本 輝久 |
| 佳 作 賞 |
ただいまといえる場所あり青林檎 |
鍬守 裕子 |
| 佳 作 賞 |
八月の柱はいまも燃えている |
中村 重義 |
| 佳 作 賞 |
曝書して三島由紀夫としばらく居る |
小南千賀子 |
| 佳 作 賞 |
天牛の逃げて絵日記終りけり |
大塚 正路 |
| 佳 作 賞 |
曼珠沙華行けども音のしない村 |
佐野 延子 |
| 佳 作 賞 |
フクシマ以後の何が真実草の花 |
村本 薺 |
| 佳 作 賞 |
大夕焼使いきるまで草を刈る |
磯村 鉄夫 |
| 佳 作 賞 |
日本に八月が来る柱かな |
篠原 信久 |
| 佳 作 賞 |
蟋蟀や用心に置く男下駄 |
津野 洋子 |
| 佳 作 賞 |
ほととぎす父見えてくる父の死後 |
笹倉 照代 |
| 佳 作 賞 |
母の日に母の顔した姉がいる |
古谷 省三 |
| 佳 作 賞 |
昭和からふっと戻りし昼寝覚 |
宮澤 雅子 |
| 佳 作 賞 |
敗戦忌高さの違う窓に人 |
有村 王志 |
| 佳 作 賞 |
田草取るたった一人の大空間 |
岸本 明子 |
| 佳 作 賞 |
かき氷やさしく崩し聞き上手 |
中根 和子 |
| 佳 作 賞 |
震度五を余震と呼びて遅き春 |
石谷かずよ |
| 佳 作 賞 |
噴水の天辺にある自由律 |
河口 俊江 |
| 佳 作 賞 |
蕎麦の花村がしばらく浮き上る |
北川 逸子 |
| 佳 作 賞 |
千手みなものもち給ふ暑さかな |
谷下 一玄 |