関西現代俳句協会

2010年 7月のエッセイ

「蒲公英」

戸村 勇夫

 私が住んでいる交野は天の川伝説がある星の町であり、自然豊かな町である。

 また、神話時代から奈良、平安、鎌倉、江戸時代と連綿とした歴史の残る町でもある。

 家から十分ほど歩くと私市植物園がある。

 二十六haの広大な地に「日本の珍しくない植物を集めた珍しい植物園」で四季折々の花が尽きることはない。格好の吟行地として訪れる人が多い。大きすぎる私の庭である。

 入口のすぐ右、水生植物の前に広場があり、一面に自生の蒲公英が黄色に地を染めている。最近、西洋蒲公英に在来の日本蒲公英が席巻されている記事を思い出して、折よく通りかかった作業服の職員の人に尋ねた。

 この蒲公英は西洋蒲公英ですか?いいえ関西蒲公英ですよ!え、蒲公英に関西、関東の区別があるのですか?ええここに咲いているのはみな関西蒲公英です!と言って事務所から図鑑を持ってきて説明して下さった。

 人里や都市の何処にでも生えている蒲公英は在来種の日本蒲公英と帰化種の西洋蒲公英があることくらいしか知らなかったから驚きである。説明と図鑑によると、蒲公英の種類は六十種ほどもある。区分の仕方は、花と花の下部にある萼と見られる総苞の違いによるものである。ちなみに同定のポイントは、

 『カンサイタンポポ』

   総苞外片は反り返らず、内変は外片よりやや長い。外片には突起がない。

   全体に細く繊細。花はあまり密でない。

 『カントウタンポポ』

   総苞外片は反り返らず、内変は著しく長い。外片にはやや突起がある。

   花はあまり密でない。

 『セイヨウタンポポ』

   総苞外片が反り返る。花は密でポンポンという表現が当てはまる。

   身近の蒲公英を調べてみると興趣が深まるばかりである。

 蒲公英の葉は古くからヨーロッパや中東で食用に供されており多少の苦みがあるがサラダなどにする。また根を乾燥させて炒ったものがたんぽぽコーヒーとして知られる。全草を乾燥したものは蒲公英(ほこうえい)という解熱、発汗、健胃、利尿の漢方薬。身近にあってありふれた蒲公英も奥が深い。知りたかったことが少し解り嬉しい日となった。

      蒲公英の絮へ丹心のせて吹く  勇夫

(以上)

◆「蒲公英」 (たんぽぽ) : 戸村 勇夫 (とむら いさお)◆