関西現代俳句協会

「春の森」 花谷和子 - 2005年3月のエッセイ

先日、「藍」枚方句会の句友と四條畷の早春の森をたずねた。宿舎はリゾート・レクリエーションセンター「アイ・アイ・ランド」。 森に囲まれた閑静な場所だ。ゆったりとして清潔で明るい。「シャープ」の経営と聞き、私は福祉に心をそそがれていた故早川徳次氏を偲んだ。句会に更けたその夜は満月。

  火のいろのつめたさ月の藪椿   和子

翌朝、私達はすぐにつづいている大阪府民の森「みどりの文化園」を散策。りょうぶ、えご、そよご、こなら、やぶつばき…色々な樹木に親しみながらゆく。芽吹く力を溜めた森の中では人恋しさがつのるのだろう。出会った殆どの方が声をかけて下さる。「どこから来はりましてん」などと。「毎日歩いてまんねん」という老齢の男性もあった。

暫くゆくとかなり広い室池に出た。鴨が点々と残っていた。岸辺では、どうやら着水をしたいらしい鴉と一羽の鴨とのドラマがたのしかった。

この吟行で私達は、ステンドガラスの工房や、旱魃の村に雨を降らせたという伝説の「龍の尾」が残る龍尾寺や四條畷神社もたずねた。府民の森「みどりの文化園」はおすすめしたい吟行地である。

  すでに木の名持たぬ切株春の森    和子