関西現代俳句協会

関西現代俳句協会トップページ


8月1日
青年部のページを更新しました。
8月1日
今月のエッセイに、鈴木ひさしさんの「だまし絵としての『第二芸術』」を掲載しました。
7月31日
会員の著作に、高橋将夫さんの句集『命と心』を掲載しました。

>>その他新着情報


2021年8月のエッセイ

だまし絵としての「第二芸術」

鈴木ひさし

 タイトルが本の読み方を方向づけてしまうことがある。桑原武夫「第二芸術―現代俳句について」は、別のタイトルであれば、また、別の読み方がされたにちがいない。あるいは、さほど話題になることもなく、忘れ去られてしまったかもしれない。

 「第二芸術」を理解するには、まず、「第二芸術」の本文を読まなければならない。タイトルを離れ、もう一度書かれた「青空と瓦礫」の時代と場所に置き直してみると、「だまし絵」としての「第二芸術」から、別の絵が見えてくる。

 日本国憲法の公布とほぼ同時に、「第二芸術」は発表された。
 『桑原武夫と第二芸術-青空と瓦礫のころ』の「はじめに」の右ページには2枚の写真を載せている。1枚は、11月3日翌日、「新憲法公布記念祝賀都民大会」の模様である。写真の上半分は晴れわたる空、皇居前を埋め尽くす10万人の老若男女、その向こうにGHQのおかれた第一生命ビル、こちら側には数名の米兵が立っている。もう一枚は、1946年2月13日、東京・新橋駅近くのヤミ市場の写真である。焼け残ったビルと瓦礫とバラックと人々。

 1946年3月5日、アメリカ教育使節団が来日し、3月30日、報告書提出。1946年5月15日、文部省の「新教育指針」の発行が始まる。1946年8月10日「教育刷新委員会」が設置され、10月16日、六三制教育の原案を決定する。雑誌『世界』に「第二芸術」が発表されるのは1946年11月号である。占領下、時代のうねりと人いきれ、その空気の中で、「第二芸術」は書かれ、読まれた。

 桑原は、「第二芸術」までに、どのような思想、作品、人物に触れてきたのか。かつて広く読まれた、桑原武夫『文学入門』(1950年、岩波新書)の「はしがき」には「私はデューイ、リチャーズおよびアランから、多くのことを学んできた」とある。

 『桑原武夫と第二芸術-青空と瓦礫のころ』では、この3人はもちろん桑原の言及した高濱虚子、松尾芭蕉、三好達治、鶴見俊輔、父桑原隲蔵にも文脈をたどり、「第二芸術」を読み直してみた。「だまし絵」は、どこをどのように見るかで見えるものが変わる。この本では、「だまし絵」のひとつの見方を示したつもりである。

 著者としてではあるが、『桑原武夫と第二芸術-青空と瓦礫のころ』は、これまでの第二芸術」の読み方が少しだけ変わる本である、と思っている。ぜひ、ご一読を。

(以上)

◆「だまし絵としての『第二芸術』」:鈴木ひさし(すずき・ひさし)◆

  

■今月のエッセイ・バックナンバー

◆2021年

タイトル 作 者
7月 僕と俳句 西田唯士
6月 今後 横井来季
5月 北国の春 音羽和俊
4月 屋根と花 小西雅子
3月 俳句とコミュニケーションについて 妹尾 健
2月 形見の餅 上森敦代
1月 新型コロナ時代の句会 岡田耕治

◆2020年

タイトル 作 者
12月 見るということ 石井 冴
11月 雪国と酒粕 村田あを衣
10月 窯神 山田 和
9月 夢ものがたり 三木星童
8月 縁―正岡家の人々 瀬川照子
7月 鶏の話 千坂希妙
6月 再会 江島照美
5月 八ヶ岳縦走記 植田かつじ
4月 水仙花 中村純代
3月 四郷の串柿 満田三椒
2月 学生結婚と情熱と言葉 衛藤夏子
1月 ひととせの蝶 鈴鹿呂仁

◆2019年

タイトル 作 者
12月 言葉に出会う 榎本祐子
11月 いまを生きる 山﨑 篤
10月 雅号の薦め 吉田星子
9月 「変容」について 金山桜子
8月 鯰と鼬 髙木泰夫
7月 レオン 横田明美
6月 茨木市、一つの俳句史 藤井なお子
5月 俳句に気を許す 塩見恵介
4月 あるコンサートで思ったこと 吉田成子
3月 初学のころ 久保純夫
2月 便船塚 おおさわ
ほてる
1月 観光公害 宇多喜代子

◆2018年

タイトル 作 者
12月 新とか旧とか 小林かんな
11月 三種の神器 出口 善子
10月 「卒業」の話 野住 朋可
9月 ヒロシマの首飾り 花谷  清
8月 朱夏のネアンデルタール人 柳川  晋
7月 一人がため 曾根  毅
6月 兜太氏と秩父の思い出 桂  凜火
5月 選のチューニング 小池 康生
4月 高野素十のコントラスト視点 橋本小たか
3月 式年開帳 蔵田ひろし
2月 わたしの俳句観 平田 繭子
1月 炉話のこと 宇多喜代子

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年