関西現代俳句協会

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9月14日
会員の著作に、江島照美さんの『発火点』を掲載しました。
9月1日
青年部のページを更新しました。
9月1日
今月のエッセイに、金山桜子さんの「「変容」について」を掲載しました。

2019年9月のエッセイ

「変容」について

金山桜子

 月刊誌のアンケートで座右の書を問われ、リビングの本棚を眺めた。

 この部屋には、句集や俳誌のほかに、とくにお気に入りの本を置いて、背筋を伸ばしたいときや異世界へ飛びたいときにそれらのページを開いているので。

 『舟越保武全随筆集/巨岩と花びらほか』(求龍堂)もそのうちの1冊で、「変容」(『石の音、石の影』)という随筆が、どこか俳句と向き合う時の様子に似ている気がして惹かれた。少し長くなるけれど、引用したい。

 学生たちが作っている塑像を見ていて、不思議なことに気がついた。
 数人の学生が、モデルを囲んで制作していた。木の芯棒に、粘土をゴテゴテくっつけたり削りとったりで、仕事の途中は、ほとんどサマにならない。ただ粘土の荒っぽいデコボコがあるだけで、それがなかなか「カタチ」にならない。粘土が見えるだけだった。
 その制作過程で、一人の塑像が、ある日突然に変わっているのに気がついた。急に「カタチ」になっていたのだ。昨日からそんなに作業が進んだのでもないのに、昨日とは、別のもの、になっていた。仕上がっているという意味ではないが、もう昨日のような粘土は感じられなくて、彫刻の「カタチ」が見えて来ていた。この学生の顔に熱気があった。(中略)
 粘土が見えなくなって形が現れる。
 絵具が見えなくなって色そのものになる。

 俳句も一心にたくさん作って、たくさん捨てることを繰り返していたら「神の分けまえ」というものが降りて来るのかもしれない。

 ただ、経験から言って、絵画も、書道も、およそ芸事といわれる領域のものは、修練を怠ると見る間にダメになるように感じる。たぶん、俳句も。それは、テクニックを失うということとは別に、「もの」が視えなくなるのではないかと思う。

 新鮮な気持で繰り返し句作を続けることが出来たら、いつか文字が消えて「心」だけが見える俳句が生まれるかも知れない。

 舟越保武は次のようにも語っている。

 「文章では、一行目から始まって順々に出来て行くので、ある日突然に変容が、というわけには行かないものだろう。ひと目で全体を見ることのできる、彫刻や絵と、順を追って読む文章とでは、『時間』との関わりあいの点でも、まったく別のものだ。」と。

 俳句も文章と違って、ひと目で全体を見ることが出来るものだから突然の変容を期待できるかもしれない。

(以上)

◆「『変容』について」:金山桜子(かなやま・さくらこ)◆

■今月のエッセイ・バックナンバー

◆2019年

タイトル 作 者
8月 鯰と鼬 髙木泰夫
7月 レオン 横田明美
6月 茨木市、一つの俳句史 藤井なお子
5月 俳句に気を許す 塩見恵介
4月 あるコンサートで思ったこと 吉田成子
3月 初学のころ 久保純夫
2月 便船塚 おおさわ
ほてる
1月 観光公害 宇多喜代子

◆2018年

タイトル 作 者
12月 新とか旧とか 小林かんな
11月 三種の神器 出口 善子
10月 「卒業」の話 野住 朋可
9月 ヒロシマの首飾り 花谷  清
8月 朱夏のネアンデルタール人 柳川  晋
7月 一人がため 曾根  毅
6月 兜太氏と秩父の思い出 桂  凜火
5月 選のチューニング 小池 康生
4月 高野素十のコントラスト視点 橋本小たか
3月 式年開帳 蔵田ひろし
2月 わたしの俳句観 平田 繭子
1月 炉話のこと 宇多喜代子

◆2017年

タイトル 作 者
12月 私が『鳥取の俳人 尾﨑坡酔』を出したわけ 小山 貴子
11月 俳句と私 桑田 和子
10月 句集のすすめ 外山 安龍
9月 松茸 西原 和孝
8月 大いなる未完の人 藤川 游子
7月 近頃、俳句に思うこと 米岡 隆文
6月 悪筆三銃士 藤本  晉
5月 「丹波百谷」俳句の今昔 大谷 茂樹
4月 おいしいアニミズム 三好つや子
3月 小海線のおにぎり 大城戸ハルミ
2月 はじめて通る道 谷川すみれ
1月 旅をする蝶 吉田 成子

◆2016年

タイトル 作 者
12月 命綱の結び方 花谷  清
11月 初学のこと 丸山 景子
10月 チョコを食べるのをやめてしまった 久留島 元
9月 灸花 志村 宣子
8月 野風呂岬を訪ねて 鈴鹿 呂仁
7月 弘前城の曳屋工事と甥の結婚式 綿貫 伸子
6月 技能・芸能の霊性と歴史性 熊川 暁子
5月 芭蕉終焉の地 森  一心
4月 近江富士 村井 隆行
3月 イチローと多作多捨 木村オサム
2月 田圃のことなど 久保 純夫
1月 手間暇ということ 宇多喜代子

◆2015年

タイトル 作 者
12月 堺大仙公園の日本庭園平成曲水の宴 谷下 一玄
11月 難病と闘いながら 政野すず子
10月 島の眺め 田宮 尚樹
9月 神戸北野坂界隈とジャズ 西川 吉弘
8月 豊かな時間 西谷 剛周
7月 戦後70年に思うこと
―飾らず、逞しく生きたい―
藤井冨美子
6月 住み心地のよい雑居ビル 辻本 冷湖
5月 生存証明 出口 善子
4月 集中治療室 小泉八重子
3月 それそれ神 辻本 孝子
2月 十年日記 森田 智子
1月 十二月のスーパーマーケットで 宇多喜代子

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年