関西現代俳句協会

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1月10日
青年部のページに関西ゼロ句会(2月16日)のお知らせを掲載しました。
12月31日
青年部のページを更新しました。
12月30日
会員の著作に、宇多喜代子さんの『森へ』を掲載しました。

2019年1月のエッセイ

観光公害

宇多喜代子

 秋の連休の一日、所用のために上京した。ところが新幹線から在来線に乗り替えようと東京駅コンコースに出て仰天、満員電車さながらの人の多さで、おいそれと中央線のホームに辿りつけないのだ。人と人の隙間を割るようにして一歩進めば大きなキャリーバッグに躓く始末。

 自分も人出の多さの中の一人ではあるのだが、それにしてもいつもの年末、ゴールデンウイークをはるかに上回る人の多さである。

 その夜、くたくたの身でテレビニュースを見るともなく見ていたら、「観光公害」という言葉が耳に入ってきた。そこに映っていたのは嵐山の渡月橋、清水の三年坂。これが昼間の東京駅同様の人の波でこれぞまさしく「公害」であると思い、それにしても「そうだ、京都 行こう」のキャンペーンで京都の名所のポスターが東京駅のあちこちに貼られていたのはついこの間のこと、あれを見たらだれだって「行こう」と思うだろうし、観光立国を目指しての施策か、中国向けには「熱烈歓迎」と呼びかけて来てもらった大事なお客さまなのだから「あなたは公害」は失敬な話ではあるのだ。

 かといって、観光地のあの一極集中の混雑には解消の妙案もない。日本の国土は狭いということを再考するか。いまのところ平和でまあまあの治安のよさを誇りにしてはいるが、ふと、このままオリンピックだの万博だの、大丈夫なのかいなと思わないでもない。これら世界相手の催しに世界中から集まってきて、来たついでにあちこち観光という人たちに「あなたたち観光公害」というのもナンだしなぁと思うばかり。

 思えば昭和39年の東京オリンピック、45年の大阪での日本万国博覧会の時代には日本全土が上昇気流に乗っており、それなりの開催効果があったとのこと、それにいくら混んでい ても観光地には観光地としてのゆとりがあった。

 あの頃から俳句も賑やかになり、新しい俳誌がぞくぞくと創刊された。今、俳句全体の高齢化が嘆きの種になっているが、オリンピック、万博の当時はみなそこそこ若かったのだ。

 さて高齢化のご同輩たち、このさき存えたとして、次の五輪、万博に向かい「観光公害」必至の人の波をかき分けて前身する力がはたしてワタシらにあるかどうか。せいぜい転倒しないように気をつけましょうを合言葉に黙って眺めているほうがよさそうでもあるのだが、この「観光公害」なる新語、いかがお思いか。

(以上)

◆「観光公害」:宇多喜代子(うだ・きよこ)◆

■今月のエッセイ・バックナンバー

◆2018年

タイトル 作 者
12月 新とか旧とか 小林かんな
11月 三種の神器 出口 善子
10月 「卒業」の話 野住 朋可
9月 ヒロシマの首飾り 花谷  清
8月 朱夏のネアンデルタール人 柳川  晋
7月 一人がため 曾根  毅
6月 兜太氏と秩父の思い出 桂  凜火
5月 選のチューニング 小池 康生
4月 高野素十のコントラスト視点 橋本小たか
3月 式年開帳 蔵田ひろし
2月 わたしの俳句観 平田 繭子
1月 炉話のこと 宇多喜代子

◆2017年

タイトル 作 者
12月 私が『鳥取の俳人 尾﨑坡酔』を出したわけ 小山 貴子
11月 俳句と私 桑田 和子
10月 句集のすすめ 外山 安龍
9月 松茸 西原 和孝
8月 大いなる未完の人 藤川 游子
7月 近頃、俳句に思うこと 米岡 隆文
6月 悪筆三銃士 藤本  晉
5月 「丹波百谷」俳句の今昔 大谷 茂樹
4月 おいしいアニミズム 三好つや子
3月 小海線のおにぎり 大城戸ハルミ
2月 はじめて通る道 谷川すみれ
1月 旅をする蝶 吉田 成子

◆2016年

タイトル 作 者
12月 命綱の結び方 花谷  清
11月 初学のこと 丸山 景子
10月 チョコを食べるのをやめてしまった 久留島 元
9月 灸花 志村 宣子
8月 野風呂岬を訪ねて 鈴鹿 呂仁
7月 弘前城の曳屋工事と甥の結婚式 綿貫 伸子
6月 技能・芸能の霊性と歴史性 熊川 暁子
5月 芭蕉終焉の地 森  一心
4月 近江富士 村井 隆行
3月 イチローと多作多捨 木村オサム
2月 田圃のことなど 久保 純夫
1月 手間暇ということ 宇多喜代子

◆2015年

タイトル 作 者
12月 堺大仙公園の日本庭園平成曲水の宴 谷下 一玄
11月 難病と闘いながら 政野すず子
10月 島の眺め 田宮 尚樹
9月 神戸北野坂界隈とジャズ 西川 吉弘
8月 豊かな時間 西谷 剛周
7月 戦後70年に思うこと
―飾らず、逞しく生きたい―
藤井冨美子
6月 住み心地のよい雑居ビル 辻本 冷湖
5月 生存証明 出口 善子
4月 集中治療室 小泉八重子
3月 それそれ神 辻本 孝子
2月 十年日記 森田 智子
1月 十二月のスーパーマーケットで 宇多喜代子

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年