関西現代俳句協会

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3月30日
4月12日のげんげ句会、4月25日の総会&第7回『関西現代俳句大会』、5月10日の妙満寺吟行中止になりました。
3月18日
青年部のページを更新しました。
3月1日
今月のエッセイに、満田三椒さんの「四郷の串柿」を掲載しました。

2020年3月のエッセイ

四郷の串柿

満田三椒

 昨年秋、ねんりんピック和歌山俳句大会の選者として「秋」誌の主宰、佐怒賀正美氏が来和された。大会の翌日、佐怒賀氏をお誘いして、車で紀の川沿いを下流から遡上、最後は今が時季の四郷の串柿を見に行くことになった。

 当日は、佐怒賀主宰、和歌山の俳誌「水韻」主宰の上野みのりさん、京鹿子同人の辻本俊子さんとの4名の吟行。紀州藩の参勤交代の宿泊所の名手本陣、「秋」の同人だった木村恵洲氏の句碑を巡り、空海の母が晩年に滞在した慈尊院、六文銭の真田庵を訪ねた後、四郷の串柿の里へ。天気予報では雨だったが、時折日の射す、吟行日和となった。

 京都・奈良・和歌山を結ぶ、まだ建設途上の京奈和道を、かつらぎ西ICで降り、大阪へ抜ける道を進みはじめると、前方の山並に2箇所ほどオレンジ色の集落が見えはじめた。この地区の日当たりの良い山間に、里(郷)が4箇所あり、合わせて「四郷の串柿」の産地となっている。農家の数は60軒あまり。その60軒が、最盛期には一家総出で夜遅くまで作業を続け、全国の串柿のほとんどを生産しているという。

    山の日の移ろひやすし柿を干す    俊子

 トンネルの手前をヘアピンカーブのように曲がり、急な坂を右に左にハンドルを切りながら車1台の幅の狭い道を登って行く。やがて前方にオレンジ色の太い帯が見えてきた。道の左側は崖、右側は絶壁の小道の、絶壁側に左右1メートルほどの波板の屋根が道に沿って続く。その屋根の下に、長さ50㎝ほどの串に10個の柿が左右を縄に挿され、それが縦に10段ほど並んで、1枚の簾となっている。その簾が、20㎝ほどの間隔で、延々と縦列を組んで吊るされ、まるで宙に浮く朱色の土塀のようだ。絶壁の谷の底から吹き上げる風がその簾の間を吹きぬけて、干した柿の水分を抜いていく。

    身を細め甘さ閉じ込め吊し柿     三椒

 少し広くなった三叉路に車を止めて、串柿の朱色の土塀と、土手に囲まれた細い道の間を柿のあまい匂いをかぎながら、各自俳句手帳を広げて散策を始める。串柿の簾の間からは、遠く紀州の山並みが見え、遥に高野山も望めるという。道が少し下りかけたところで一軒の農家の作業場に出くわす。

 裸電球に煌々と照らされる中、若い女性と、熟年の夫婦らしき3人が、串柿作りの作業中。若い女性は、柿の皮を剥く作業。鉄製の凹んだ台に柿を縦に置くと、くるっと廻って、上からドリルのキリのようなものに突き刺されて廻り出す。横手から刃が近づいて、器用に柿の皮だけが剥かれて行く。皮を剥かれた柿は、右のコンテナに、剥かれた皮は、下のコンテナにうづ高く詰まれて行く。

 男性は竹の串に柿を刺す作業。竹串には10個の柿を2・6・2の順に分けて挿してゆく。「夫婦ニコニコ(2個2個)仲睦(中6つ)まじく」という語呂合わせ。「しかし、夜の12時ごろまでやっとると、皆、疲れて来てな、夫婦、仲、むずかしくなってくるんよ」と笑いながら「竹串はメイドインチャイナ。中に柿の種があるんで、経験をつまんと旨く挿せんのよ」と器用に剥かれた柿を竹の串に挿していく。

    串柿の手作業爺の勘頼り      みのり

 また散策に戻ると、曇りがちの西の空の雲間から、急に日差しが差し込んで、吊るされた柿が、一斉にオレンジ色に輝き出した。この一瞬、私はカメラを持って、土手を登ったり降りたりしながらシャッターを切り、他の3人は、良い句が出来たのか、俳句手帳に句をさらさらと書き込み始めた。

    日と風がそそぐ柿渋抜けるまで    正美

(以上)

◆「四郷の串柿」:満田三椒(みつだ・さんしょう)◆

■今月のエッセイ・バックナンバー

◆2020年

タイトル 作 者
2月 学生結婚と情熱と言葉 衛藤夏子
1月 ひととせの蝶 鈴鹿呂仁

◆2019年

タイトル 作 者
12月 言葉に出会う 榎本祐子
11月 いまを生きる 山﨑 篤
10月 雅号の薦め 吉田星子
9月 「変容」について 金山桜子
8月 鯰と鼬 髙木泰夫
7月 レオン 横田明美
6月 茨木市、一つの俳句史 藤井なお子
5月 俳句に気を許す 塩見恵介
4月 あるコンサートで思ったこと 吉田成子
3月 初学のころ 久保純夫
2月 便船塚 おおさわ
ほてる
1月 観光公害 宇多喜代子

◆2018年

タイトル 作 者
12月 新とか旧とか 小林かんな
11月 三種の神器 出口 善子
10月 「卒業」の話 野住 朋可
9月 ヒロシマの首飾り 花谷  清
8月 朱夏のネアンデルタール人 柳川  晋
7月 一人がため 曾根  毅
6月 兜太氏と秩父の思い出 桂  凜火
5月 選のチューニング 小池 康生
4月 高野素十のコントラスト視点 橋本小たか
3月 式年開帳 蔵田ひろし
2月 わたしの俳句観 平田 繭子
1月 炉話のこと 宇多喜代子

2017年

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