関西現代俳句協会

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10月12日
会員の著作に、渡邉美保さんの『櫛買ひに』と山﨑篤さんの『いまを生きる 』と藤井なお子さんの『ブロンズ兔 』を掲載しました。
10月9日
イベント案内に10月27日「法隆寺周辺吟行」と12月7日「令和元年度忘年会&第44回句集祭 」を掲載しました。
10月5日
関西現代俳句協会会報(№49)が発行されました。

2019年10月のエッセイ

雅号の薦め

吉田星子

 小学校5年の頃、大阪住吉区の父の社宅は三十数坪の住宅でしたが、庭、南東の隅に芒が生えて居り、梅雨が明けると鬱蒼とは行かないまでも、まるで塚のように盛り上っていました。この光景を

    梅雨明けて俄かに伸びた若すすき

と詠みました。これが拙作第1号でした。

 長岡京市に移り住んだ頃は、高槻駅から桂駅まで急行列車が止まらず、大山崎から長岡地域は竹林ばかり。長岡天満宮一帯の道路は雨に泥るみ、晴れに砂埃りが舞い上がると言った田舎駅でした。

 高校3生の折、父すばるが鈴鹿野風呂主宰を初め、西澤十七星ご一家を自宅にご招待。竹林を巡り、また筍加工工場を見学した後、7名での小句会を催したのがきっかけで俳句に向きあうようになりました。

 翌年から「京鹿子」誌に投句を始め、翌々年から五条通にあった尼寺・金光院での例会に参加していました。木田千女さんが2句欄に載っていた頃で、なかなか野風呂先生の選には入りませんでしたが、昭和40年の3月の例会にて

    遊び居る子らの柔髪に東風伝ふ

 と言う句を選んでいただき、すばる星とあけり星の子という意味合いの「星子」という雅号を賜り、「野風呂名づけ子五百人」の一人として、後年の記念祭にも出席しました。山口誓子のような俳人に成長せよとのご期待に応えらぬまま、社会人になった翌年に風邪をこじらせた結果長い闘病生活、1年3月もの間、職場を休むことになり、京鹿子句会とは縁の薄い年月が数十年も過ぎ去ることになりました。

 しかし、父が没した翌年から京鹿子に復帰。父が没して五年後に母も亡くなり、2006年には同人に推挙していただき、その翌年には編集部へ。京鹿子では、百ページ近い投句欄の校正作業は凡そ7人、本文欄は従来から2名でやりくりしていますので、編集長が脳梗塞に罹られ、急遽1人で毎月の俳誌を滞りなく発行しなければならないという事態の折は、その重責の重さに強い頭痛に苛まれていました。昨今は早め早めにことを進めるように努めていますので、頭痛はしませんが、原稿を集める、貯畜しておくと言う過程では、心労が無い訳でもありません。

 長々と綴って来参りましたが、掲題の雅号についてにいて述べますと、前師都峰主宰が時々薦めておられたのが雅号という隠れ蓑。

 少し大胆な句を詠んだとしても、或いは恋の句を詠んだとしても、それは本名のわたしでは無く、私とは別の名の者が詠んだのですから・・・という気安さが雅号にはあります。救いがあります。だから従来の自身の殻を破って、伸び伸びと詠め得るメリットがあると言う訓え。

 今春に詠んだ拙作

    花万朶幸せすぎて怖いほど

 これは男のわたしが女性の立場で詠んだものです。女と思わせておきながら、名乗りを男がする面白さもあります。

 来年「京鹿子」は創刊百周年を迎えます。創刊時の鈴鹿登が、野風呂、その実子・丸山家の尚が海道、前師の豊田充男は都峰、野風呂の孫にあたる現主宰は野風呂から1字、実父の鈴鹿仁を併せて「呂仁」の号。

 令和となった5月号から「私の雅号の謂れ」と言うシリーズを始めました。「曲水の宴」で使われる巴字盞に因む「巴水」の雅号。一方、好きな茶道から自らつけた「宗久」は舞踊にも長けた女人。目ぱっちりさんの「希眸」は羨ましい雅号。雅号をお持ちになった方々は、披講の席で名乗りをあげる都度、下賜された光景を反復しておられることでしょう。

(以上)

◆「雅号の薦め」:吉田星子(よしだ・せいし)◆

■今月のエッセイ・バックナンバー

◆2019年

タイトル 作 者
9月 「変容」について 金山桜子
8月 鯰と鼬 髙木泰夫
7月 レオン 横田明美
6月 茨木市、一つの俳句史 藤井なお子
5月 俳句に気を許す 塩見恵介
4月 あるコンサートで思ったこと 吉田成子
3月 初学のころ 久保純夫
2月 便船塚 おおさわ
ほてる
1月 観光公害 宇多喜代子

◆2018年

タイトル 作 者
12月 新とか旧とか 小林かんな
11月 三種の神器 出口 善子
10月 「卒業」の話 野住 朋可
9月 ヒロシマの首飾り 花谷  清
8月 朱夏のネアンデルタール人 柳川  晋
7月 一人がため 曾根  毅
6月 兜太氏と秩父の思い出 桂  凜火
5月 選のチューニング 小池 康生
4月 高野素十のコントラスト視点 橋本小たか
3月 式年開帳 蔵田ひろし
2月 わたしの俳句観 平田 繭子
1月 炉話のこと 宇多喜代子

◆2017年

タイトル 作 者
12月 私が『鳥取の俳人 尾﨑坡酔』を出したわけ 小山 貴子
11月 俳句と私 桑田 和子
10月 句集のすすめ 外山 安龍
9月 松茸 西原 和孝
8月 大いなる未完の人 藤川 游子
7月 近頃、俳句に思うこと 米岡 隆文
6月 悪筆三銃士 藤本  晉
5月 「丹波百谷」俳句の今昔 大谷 茂樹
4月 おいしいアニミズム 三好つや子
3月 小海線のおにぎり 大城戸ハルミ
2月 はじめて通る道 谷川すみれ
1月 旅をする蝶 吉田 成子

◆2016年

タイトル 作 者
12月 命綱の結び方 花谷  清
11月 初学のこと 丸山 景子
10月 チョコを食べるのをやめてしまった 久留島 元
9月 灸花 志村 宣子
8月 野風呂岬を訪ねて 鈴鹿 呂仁
7月 弘前城の曳屋工事と甥の結婚式 綿貫 伸子
6月 技能・芸能の霊性と歴史性 熊川 暁子
5月 芭蕉終焉の地 森  一心
4月 近江富士 村井 隆行
3月 イチローと多作多捨 木村オサム
2月 田圃のことなど 久保 純夫
1月 手間暇ということ 宇多喜代子

◆2015年

タイトル 作 者
12月 堺大仙公園の日本庭園平成曲水の宴 谷下 一玄
11月 難病と闘いながら 政野すず子
10月 島の眺め 田宮 尚樹
9月 神戸北野坂界隈とジャズ 西川 吉弘
8月 豊かな時間 西谷 剛周
7月 戦後70年に思うこと
―飾らず、逞しく生きたい―
藤井冨美子
6月 住み心地のよい雑居ビル 辻本 冷湖
5月 生存証明 出口 善子
4月 集中治療室 小泉八重子
3月 それそれ神 辻本 孝子
2月 十年日記 森田 智子
1月 十二月のスーパーマーケットで 宇多喜代子

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年