関西現代俳句協会

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4月21日
青年部のページに「句集を読み合う 岡村知昭×中村安伸」(5月21日)のお知らせを掲載しました。
4月18日
会員の著作に、久保純夫さんの句集『四照花亭日乗』を掲載しました。
4月1日
青年部のページを更新しました。

2017年4月のエッセイ

おいしいアニミズム

三好つや子

 私の住んでいる羽曳野は豆畑が多い。とりわけ、豆ご飯でおなじみのうすいえんどうの栽培が盛んで、4月には紋白蝶のような花が次々と咲き、とてもきれいだ。うすいえんどうの「うすい」は羽曳野の地名のひとつ「碓水」のことで、明治時代に地元の庄屋がアメリカの豆を植えて成功し、やがて全国に広がったのだとか。

 以前、わが家でもこの豆を育てていたことがある。舅がまだ元気で、家の前が空き地だった頃、10坪ほどのスペースだったが、家族で食べる1年分と近所に配っても余る位の量が取れた。  

 カレー、肉じゃが、ポテトサラダに欠かせないうすいえんどう。わが家で育てたものだから、特別おいしく感じられ、舅はとりわけ力を入れていたようだ。 11月に種を蒔き、立春の頃に支柱を立てる。暖かくなるにつれ、茎がぐんぐん伸びて葉を広げ、5月のはじめには莢がいっぱい成る。莢の中には6、7粒の豆が入っていて、1粒1粒ひすいのように光り、息をのむほど美しい。豆ご飯や卵とじにすると最高だ。莢がふくらんできたら、収穫のサイン。なので、ゴールデンウィークは家族で莢摘みに追われる。それが済んだら、豆を捥ぎ、ゆがいて冷凍する。目の回る忙しさだ。

 今だから懐かしく思い出されることだが、あの頃は連休なのに遊びに行けず、ムシャクシャしながら莢を摘んでいた。そんなとき、蔓の間からふいにカマキリが現れ、手の甲に止まった。秋とは違い、体長が10センチにも満たない、あどけない感じのカマキリだ。 

 けれども、当時、虫が苦手だった私は、あわてて鋏を落っことし、近所に聞こえるほどの大きな悲鳴を上げてしまった。

    かまきりの手だか脚だか豆の蔓

 後年、そんな体験をもとに詠んだ句が、海程誌の「秀作鑑賞」コーナーに取り上げられ、とても感激した。金子兜太主宰が提唱されておられる「生きもの感覚」を、私なりに野菜という身近な自然の中に見いだし、やっと詠むことができたのだろう。

 舅は豆以外にもキャベツ、じゃがいも、たまねぎ、トマト、ナス、白菜、水菜などの野菜を育てていた。おかげで、私はそれらが芽をだし、花が咲いて、実る過程を目にすることができた。土塊の素描のような新じゃが。今にも水が羽ばたきそうな水菜。俳句をはじめたとき、野菜畑で見たり感じたりしたことがよみがえり、作句に役立った。

 野菜を通して見えてくるものを17音にするのが、思いのほか私に合っていたのだろうか。産地を訪ね、畑を見せてもらったり、生産者に聞いたりして、言葉を紡いだ。最近、野菜の句はあまり作らなくなったが、私の原点はやはり土の香りのする俳句だと思っている。これからも、生きもの感覚を大切にしながら、自分らしいまなざしで自分らしい俳句を詠みたい。 

(以上)

◆「おいしいアニミズム」:三好つや子(みよし・つやこ)◆

 

■今月のエッセイ・バックナンバー

◆2017年

タイトル 作 者
3月 小海線のおにぎり 大城戸ハルミ
2月 はじめて通る道 谷川すみれ
1月 旅をする蝶 吉田 成子

◆2016年

タイトル 作 者
12月 命綱の結び方 花谷  清
11月 初学のこと 丸山 景子
10月 チョコを食べるのをやめてしまった 久留島 元
9月 灸花 志村 宣子
8月 野風呂岬を訪ねて 鈴鹿 呂仁
7月 弘前城の曳屋工事と甥の結婚式 綿貫 伸子
6月 技能・芸能の霊性と歴史性 熊川 暁子
5月 芭蕉終焉の地 森  一心
4月 近江富士 村井 隆行
3月 イチローと多作多捨 木村オサム
2月 田圃のことなど 久保 純夫
1月 手間暇ということ 宇多喜代子

◆2015年

タイトル 作 者
12月 堺大仙公園の日本庭園平成曲水の宴 谷下 一玄
11月 難病と闘いながら 政野すず子
10月 島の眺め 田宮 尚樹
9月 神戸北野坂界隈とジャズ 西川 吉弘
8月 豊かな時間 西谷 剛周
7月 戦後70年に思うこと
―飾らず、逞しく生きたい―
藤井冨美子
6月 住み心地のよい雑居ビル 辻本 冷湖
5月 生存証明 出口 善子
4月 集中治療室 小泉八重子
3月 それそれ神 辻本 孝子
2月 十年日記 森田 智子
1月 十二月のスーパーマーケットで 宇多喜代子

2014年

2013年

2012年

2011年

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2009年

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