関西現代俳句協会

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5月12日
青年部のページに連続企画 戦後俳句を聞く(2)~竹中宏の「写生」と「定型」~(6月22日)のお知らせを掲載しました。
5月4日
協会の概要ページに久保純夫新会長の「関西現代俳句協会会長に就任して」を掲載しました。
5月1日
今月のエッセイに、塩見恵介さんの「俳句に気を許す」を掲載しました。

2019年5月のエッセイ

俳句に気を許す

塩見恵介

 現在、将棋には藤井聡太、俳句には夏井いつきという、スターが現れている。昨秋、結社のフォーラムを担当し「将棋と俳句」という破天荒な企画を行ったところ、神戸新聞が面白がってくれ、将棋の内藤国雄九段と俳人の坪内稔典氏の新春対談に発展した。将棋と俳句の二刀流?の私も進行役を仰せ付けられ、余徳に預かった。お二人の間で夢のような楽しい対談と酒宴。気付けば、二次会、深夜の神戸。現役時代から酒豪の名を恣にしてきた内藤九段とスナックの止まり木にいた。内藤九段は「おゆき」を歌って下さる。私はお返しに九段がファンだという三橋美智也の「名月赤城山」を歌う。すると「古城」が返される、というエンドレスなカラオケ合戦。ほどよい酩酊の中、内藤九段がつぶやく。「塩見さん、男同士で楽しい酒を一緒に飲めるのは、二種類しかないやろ?よっぽど自分に気を遣ってくれるか、よっぽど気を許してくれるか、どちらかやナァ」と。さて、僕はどっちかになれていたのだろうか。

 これは文芸にもあてはまる。昨年暮れに行われた「第15回鬼貫青春俳句大賞公開選考会」、私も審査員の一人として参加した。公開選考がスムーズに終わり、余った時間は応募者と審査員のフリートークとなった。席上、今回は惜しくも落選した若者から

 「型が守られているがために目新しい表現でなく、年配の俳人が書けるような題材でも、それがその青年のリアルな青春の俳句ではないでしょうか。あなたがた大人の求める青春から外れているという理由で選から漏れるのは、その人の青春の否定ではないでしょうか」と質問があった。公開選考はある意味残酷で、受賞作以外の大部分が無視されてしまう。私自身、応募した賞はことごとく落選を続けているので、この青年の質問したい気分は、心に刺さる。「俺は嫌われているから、これまでも今後も賞はもらえないけれど、君は好青年だから諦めるな」と心中、応援した。質問には稲畑廣太郞氏が「いかなる青春俳句も否定しない」と答えていた。私自身は、以下の村上春樹が1979年に「群像文学新人賞」受賞したときのコメントを思っていた。

(前略)フィツジェラルドの「他人と違う何かを語りたければ、他人と違った言葉で語れ」という文句だけが僕の頼りだったけれど、そんなことが簡単に出来るわけはない。四十歳になれば少しはましなものが書けるさ、と思い続けながら書いた。今でもそう思っている。受賞したことは非常に嬉しいけれど、形のあるものだけにこだわりたくはないし、またもうそういった歳でもないと思う。

 俳句も「他人と違った言葉」を探し続けるエネルギーが大切な仕事につながると思う。賞が欲しいなら、俳壇に「よっぽど気を遣って」追随をきわめるか、俳壇に「よっぽど気を許して」独自性を発揮してふるまうか、どちらかに振り切ることだろう。俳壇はともかく、私はできれば、「俳句」に対して後者でありたいと思っている。「俳句の鬼」になるのではない。「俳句の虫」になればいいと思っている。三島由紀夫は『小説入門』でこういう。

 私が作家志望の方々に実生活の方へゆく事をおすすめするのは、その両立しえないような生活を両立させようとぎりぎりの所まで努力する事が、たとえそれが敗北に終わろうとも小説家としての意志の力を鍛える上に、また芸術と生活との困難な問題をぎりぎりまで味わうために決して無駄ではないと思うからである。

 俳句も文学であるなら、私は、今日も生活にもがきながら、気の置けない若者たちと俳句を楽しみ、俳句の魅力を語る著作を書きつつ、「他人と違う言葉」を探し続けて、「俳句」に「気を許す」自分として振る舞いたいと思う。

(以上)

◆「俳句に気を許す」:塩見恵介(しおみ・けいすけ)◆

■今月のエッセイ・バックナンバー

◆2019年

タイトル 作 者
4月 あるコンサートで思ったこと 吉田成子
3月 初学のころ 久保純夫
2月 便船塚 おおさわ
ほてる
1月 観光公害 宇多喜代子

◆2018年

タイトル 作 者
12月 新とか旧とか 小林かんな
11月 三種の神器 出口 善子
10月 「卒業」の話 野住 朋可
9月 ヒロシマの首飾り 花谷  清
8月 朱夏のネアンデルタール人 柳川  晋
7月 一人がため 曾根  毅
6月 兜太氏と秩父の思い出 桂  凜火
5月 選のチューニング 小池 康生
4月 高野素十のコントラスト視点 橋本小たか
3月 式年開帳 蔵田ひろし
2月 わたしの俳句観 平田 繭子
1月 炉話のこと 宇多喜代子

◆2017年

タイトル 作 者
12月 私が『鳥取の俳人 尾﨑坡酔』を出したわけ 小山 貴子
11月 俳句と私 桑田 和子
10月 句集のすすめ 外山 安龍
9月 松茸 西原 和孝
8月 大いなる未完の人 藤川 游子
7月 近頃、俳句に思うこと 米岡 隆文
6月 悪筆三銃士 藤本  晉
5月 「丹波百谷」俳句の今昔 大谷 茂樹
4月 おいしいアニミズム 三好つや子
3月 小海線のおにぎり 大城戸ハルミ
2月 はじめて通る道 谷川すみれ
1月 旅をする蝶 吉田 成子

◆2016年

タイトル 作 者
12月 命綱の結び方 花谷  清
11月 初学のこと 丸山 景子
10月 チョコを食べるのをやめてしまった 久留島 元
9月 灸花 志村 宣子
8月 野風呂岬を訪ねて 鈴鹿 呂仁
7月 弘前城の曳屋工事と甥の結婚式 綿貫 伸子
6月 技能・芸能の霊性と歴史性 熊川 暁子
5月 芭蕉終焉の地 森  一心
4月 近江富士 村井 隆行
3月 イチローと多作多捨 木村オサム
2月 田圃のことなど 久保 純夫
1月 手間暇ということ 宇多喜代子

◆2015年

タイトル 作 者
12月 堺大仙公園の日本庭園平成曲水の宴 谷下 一玄
11月 難病と闘いながら 政野すず子
10月 島の眺め 田宮 尚樹
9月 神戸北野坂界隈とジャズ 西川 吉弘
8月 豊かな時間 西谷 剛周
7月 戦後70年に思うこと
―飾らず、逞しく生きたい―
藤井冨美子
6月 住み心地のよい雑居ビル 辻本 冷湖
5月 生存証明 出口 善子
4月 集中治療室 小泉八重子
3月 それそれ神 辻本 孝子
2月 十年日記 森田 智子
1月 十二月のスーパーマーケットで 宇多喜代子

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年